遺伝のメカニズムから紐解く隔世遺伝の仕組み

お父さんやお母さんと顔つきは似ていないけど、おじいちゃんやおばあちゃんと顔つきが似ている。

このような方は隔世遺伝によって、おじいちゃんやおばあちゃんから継承された遺伝子が顔立ちや体つきといった外見的な特徴に影響を与えていると考えて良いでしょう。

このページでは、不思議な遺伝現象のひとつである隔世遺伝のメカニズムをご紹介させていただきます。

隔世遺伝の仕組み

まず隔世遺伝の基本的な仕組みから説明していきましょう。

隔世遺伝とは、祖父母の代やそれ以上前の世代で遺伝子の影響で表に出ていた特徴が、父親や母親の代では出ず、子の代で表に出てくる遺伝のことを言います。

祖父母から直接子の世代に遺伝子が継承されるということはありえませんので、子の代で表に出る形質の元となる遺伝子は祖父母から親を介して子の代に遺伝しているのですが、表面上は世代を飛ばして遺伝子の影響が表に出ているように見えることから隔世(世代を隔てる)遺伝と呼ばれています。

隔世遺伝は先祖がえりという言葉で表現されることもあります。

隔世遺伝の最も簡単な例として挙げられるのが、血液型を例とした隔世遺伝や男性型脱毛症を例とした隔世遺伝です。
それぞれの例から隔世遺伝の実態を説明していきます。

血液型が隔世遺伝する仕組み

血液型の遺伝は隔世遺伝が出現する最も分かりやすい例といえるでしょう。

両親がA型やB型、AB型であるのにO型の子が生まれるケースから説明させていただきます。
血液型を決定する遺伝子はABOの3種類で構成されていて、O型という血液型はメンデルの遺伝法則で説明するところの劣性の遺伝子にあたりますので、OOの組み合わせでなければ血液型がO型になることはありません。
つまり、遺伝子の組み合わせがAOやAAの場合はA型になりますし、BOやBBの場合はB型、ABの場合はAB型といった血液型になります。

血液型の例では、父母の両方がAOの組み合わせによるA型か、BOの組み合わせによるB型のいずれかに該当する場合に隔世遺伝が起こります。

分かりやすく説明するために、父方の祖父の血液型がO型(OO)で祖母の血液型がAB型(AB)、母方の祖父の血液型がA型(AO)で祖母の血液型がB型(BO)であったとしましょう。
父は祖父からOOの遺伝子のいずれか一方を、祖母からABの遺伝子のいずれか一方を遺伝により継承しますので、OとBを祖父母からそれぞれ継承したと仮定します。
つづいて母は祖父からAOの遺伝子のいずれか一方を、祖母からBOの遺伝子のいずれか一方を遺伝により継承しますので、AとOを祖父母からそれぞれ継承したと仮定します。

この場合、父の血液型はB型で母の血液型はA型となりますが、遺伝子の組み合わせで見てみると父はBO、母はAOの遺伝子を持っているということがお分かりいただけるかと思います。
続いてBOの父、AOの母から生まれる子の血液型のパターンをみていきましょう。

上記のイラストのとおり、AOの父とBOの母からはそれぞれ25%の確率でA型(AO)、B型(BO)、AB型(AB)、O型(OO)の子が生まれてきますので、O型の子が生まれた場合に父方の祖父の隔世遺伝が起きたように見えるわけです。

男性型脱毛症が隔世遺伝する仕組み

続いて男性型脱毛症(AGA)が隔世遺伝する仕組みについてご紹介いたします。

男性型脱毛症はジヒドロテストステロンと呼ばれる強力な男性ホルモンが発生することによって、頭頂部や前頭部の毛髪が細くなり薄毛が進行する症状で、男性の薄毛の大半がこの男性型脱毛症だと言われています。

一方で、よく「薄毛は隔世遺伝するから祖父が薄毛の場合は要注意」という言葉を耳にしますが、遺伝のメカニズムから考えるとこの情報は正しいと言えます。

男性型脱毛症に深く関与しているとされている原因遺伝子のひとつに「男性ホルモン受容体遺伝子」があり、この男性ホルモン受容体遺伝子はX染色体と呼ばれる性染色体の中に存在します。

ヒトの性を決定しているのが性染色体で、X染色体とY染色体の組み合わせになると男の子が生まれ、X染色体とX染色体の組み合わせになると女の子が生まれます。
つまり、男性の性染色体の組み合わせはXYとなりますので、父親からは必ずY染色体を、母親からは必ずX染色体を遺伝により継承しているため、男性ホルモン受容体遺伝子は必ず母親由来のX染色体によるものになります。

女性の性染色体の組み合わせはXXとなりますので、女性は父親と母親から1本ずつX染色体を遺伝により継承しているため、この母親から生まれる男の子に遺伝するX染色体は祖父由来のX染色体か祖母由来のX染色体のどちらかになります。

祖父は男性ですのでX染色体を1本しか持っていませんから、例えば祖父が男性型脱毛症を発症するリスクの高い男性ホルモン受容体遺伝子を持っていたとしたら、2分の1の確率で祖父由来のX染色体が母親を介して子に遺伝することになります。

上記のイラストから、父親や母親が髪の毛がフサフサであったとしても、母方の祖父が薄毛の場合には、50%の確率で子が薄毛になる可能性が存在することをお分かりいただけたかと思います。

以上の仕組みで子が母方の祖父由来のX染色体を遺伝により継承した場合は、外見的な髪の毛の特徴が母方の祖父に近づきますので一般的に隔世遺伝が起きたと表現されるわけです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

簡単な例から隔世遺伝の仕組みについてご紹介いたしましたが、ご理解いただけたのであれば幸いです。

遺伝についての研究は近年著しいスピードで進んでおり、例えば様々な疾患のリスクと関連する遺伝子なども次々に解明されています。

当サイトでは遺伝の基本的な仕組みや、遺伝がカラダやココロに与える影響についてご紹介していますので、お時間がよろしければ是非ご覧いただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る