アルツハイマーの発症に遺伝が影響する?アルツハイマーの症状・原因・リスク遺伝子・初期症状・予防方法まとめ

はじめに、アルツハイマーの約99%が「孤発性」であり、遺伝要因によってのみ発症する家族性のアルツハイマーは1%程度とされていますので、この記事では主に孤発性のアルツハイマーについてご紹介させていただきます。

孤発性のアルツハイマーは遺伝的な要因と環境的な要因が絡み合って発症することがわかっています。

つまり遺伝だから必ずアルツハイマーを発症したり、反対に遺伝的に大丈夫だから絶対アルツハイマーを発症しないという性質のものではなく、遺伝が与える影響はあくまでもアルツハイマーの発症しやすさであり、遺伝的に発症しやすい体質の方であっても日頃から予防に努めることでアルツハイマーの発症リスクを抑えることができますし、反対に遺伝的に発症しにくい体質の方であっても生活習慣の影響でアルツハイマーの発症リスクは高まります。

この記事ではアルツハイマーの基本的な知識と、遺伝がアルツハイマーの発症リスクに影響を与える仕組み、アルツハイマーの発症リスクに影響を与える遺伝子の検査方法、アルツハイマーの初期症状や予防方法などについてご紹介させていただきます。

アルツハイマーとは

アルツハイマーとは正式にはアルツハイマー型認知症と呼ばれる認知症の一種であり、認知症とは何らかの影響によって脳細胞が変性し、脳の認知機能が低下して日常生活に支障をきたすようになった状態を指す総称となります。

認知症を引き起こす代表的な疾患としては、アルツハイマーのほか脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などといった病気が挙げられます。

アルツハイマーは認知症の約半数を占めると言われており、近年における認知症の原因でもっとも多い病気です。
過去には65歳という年齢を基準に65歳未満で発症するアルツハイマーをアルツハイマー病、65歳以上で発症するアルツハイマーをアルツハイマー型老年認知症と呼んでいましたが、現在ではどちらも同じ疾患として扱っています。

アルツハイマーを発症すると脳内に特殊なタンパク質が蓄積してしまい、海馬を中心として広範囲に渡って脳が萎縮していきます。
加齢とともに脳は萎縮していくものですが、アルツハイマーの場合は急激に脳が萎縮していくことが特徴です。
正常であれば頭部にびっしりと詰まった脳ですが、CT画像などでアルツハイマーを発症された方の脳を確認すると海馬を中心に萎縮して隙間ができた状態になっていることが確認することができます。

アルツハイマーの患者数の推移を表したグラフ
アルツハイマーの患者数は、厚生労働省の調査によると2002年は89,000人、2005年は176,000人、2008年は240,000人、2011年は366,000人、そして2014年には534,000人という患者数となっています。近年急激に患者数が増加しており、多くの患者が存在する発症頻度の高い病気といえるでしょう。

アルツハイマーの症状

アルツハイマーは比較的ゆるやかに進行するものと考えられており、アルツハイマーの原因となる老人斑が脳に現れてから20年程度の時間をかけて発症するとされています。

アルツハイマーの症状①:記憶障害

アルツハイマーを発症すると海馬を中心に脳の萎縮が引き起こされるということは上述の通りですが、海馬は特に脳の中の記憶を司る組織ですので、アルツハイマーの症状として顕著に現れる症状が「記憶障害」となります。

一般にヒトは加齢とともにもの忘れが増えていくものですが、アルツハイマーによる記憶障害は加齢によるもの忘れとは大きく異なる特徴を持ちます。
加齢によるもの忘れは「過去の出来事を思い出そうとしても思い出せない」のに対し、アルツハイマーによる記憶障害では「過去にあった出来事そのものを忘れてしまう」ことが特徴ですので、本人にもの忘れの自覚がない場合は注意が必要です。(もの忘れがヒドいという自覚症状がある場合は加齢によるもの忘れと推測されます。)

アルツハイマーの発症初期には数分〜数日前に起こった出来事を忘れてしまう近時記憶障害が多く見受けられ、アルツハイマーが進行していくにしたがって数週間〜数十年前に起こった出来事を忘れてしまう遠隔記憶障害に発展していきます。

アルツハイマーの症状②:見当識障害

アルツハイマーの発症後、もっとも萎縮が現れるのが海馬・海馬傍回・扁桃体といった大脳辺縁系で、徐々に側頭葉や頭頂葉へと萎縮の範囲が広がっていきます。
側頭葉や頭頂葉の萎縮が始まると、時間・場所・人物が認識できなくなる見当識障害が現れます。

特にアルツハイマーの発症初期には日時などがわからなくなる時間の見当識障害が現れ、アルツハイマーが進行していくと場所や人物の見当識障害が現れて、今自分がどこにいるのか、あるいは目の前にいる相手が誰なのかがわからなくなっていきます。

アルツハイマーの症状③:実行機能障害

アルツハイマーの発症によって脳の萎縮が前頭部に及んだ場合、計画・判断・意思決定などを行う実行機能に障害が発生し、これまで難なくこなせていた物事をだんだんと処理することができなくなっていきます。
実行機能障害はアルツハイマー発症後初期に現れることが多いとされています。

アルツハイマーの症状④:高次脳機能障害

アルツハイマーの発症後、脳の萎縮が側頭葉・頭頂葉に及んでくると、考えても言葉がうまく出てこなくなる「失語」や、対象のものが正しく認識できなくなる「失認」、日常的な簡単な動作ができなくなる「失行」といった高次脳機能障害が現れます。
失語・失認・失行には様々な細かい症状がありますが、アルツハイマーによる高次脳機能障害では特に以下の症状が現れる傾向が多いとされています。

健忘失語

発語や言語の理解はできるものの喋ろうとすると言葉が出てこなくなる症状が現れます。

視覚失認

目の前にあるものをはっきりと見ることができるにもかかわらず、それが何なのかを正しく認識することができなくなる症状が現れます。

着衣失行

これまで日常的にできていた衣服の着脱ができなくなる症状が現れます。

構成失行

図形を描いたり積み木を積むといったものを形作ることができなくなる症状が現れます。

上記の症状は、脳の萎縮が側頭葉・頭頂葉に広がるアルツハイマーの中期に現れる傾向があると言われています。

アルツハイマーの原因

アルツハイマーの直接的な原因は海馬を中心とした脳の萎縮ですが、脳の萎縮は脳の神経細胞の死滅により引き起こされています。

様々な情報を処理するため、脳には千数百億個の神経細胞が存在しています。
神経細胞はお互いに連携し、隣り合う神経細胞に情報を伝達していくことによって情報のネットワークの役割を果たしていますので、神経細胞が死滅してしまうと、次第に脳内の情報伝達がうまく働かなくなり障害が引き起こされます。

つまり、アルツハイマーの真の原因は神経細胞の死滅となりますが、アルツハイマーの研究が進むに連れて脳の神経細胞を死滅させている原因物質が少しづつ解明されてきました。
具体的には以下の原因が脳の神経細胞の死滅を促していると考えられています。

アルツハイマーの原因①:アミロイドβの過剰産生

隣り合う神経細胞同士は互いに密接しているわけではなく、わずかな隙間が空いており、一方の神経細胞から他方の神経細胞に向けて神経伝達物質を放出することにより情報を伝達していきます。

神経伝達物質の放出に伴いアミロイドβと呼ばれる特殊なタンパク質が産生されます。
正常時はアミロイドβが一定の濃度になるよう産生量が調整されているのですが、このバランスが崩れてしまうとアミロイドβが過剰に産生されてしまいます。
そうすると、余ったアミロイドβの分子同士が結合して「アミロイドβオリゴマー」が形成されます。
このアミロイドβオリゴマーは神経細胞に対する強い毒性を持っていますので、アミロイドβオリゴマーが神経を傷つけ最終的には死滅させてしまい、脳を萎縮させアルツハイマーを引き起こす原因となります。

アルツハイマーの原因②:神経原繊維変化

神経細胞の形を維持する役割等を果たしているタウタンパクが過剰にリン酸化されると、神経細胞内で繊維状に変化します。
これを神経原繊維変化と呼びますが、神経原繊維変化したタウタンパクがどんどん蓄積されてきて凝縮されると、神経細胞の中でタングルと呼ばれる神経原線維の集合体が形成されます。

タングルは神経細胞に対する強い毒性を持っていますので、内部にタングルが形成された神経細胞は機能障害を起こし、やがて死滅してしまいます。

神経細胞の死滅により、脳を萎縮させアルツハイマーを引き起こす原因となります。

アルツハイマーの原因③:神経伝達物質の減少

上述したとおり、神経細胞同士の間にはわずかな隙間が存在し、他方の神経細胞に向けて神経伝達物質を放出することで情報を伝達しています。

神経伝達物質は60種類以上存在しますが、この中で運動や興奮に関する情報の伝達や認知機能を保つ役割を果たしていると言われているのがアセチルコリンです。
アセチルコリンの量が減少すると認知機能を低下させてしまうため、アルツハイマーの原因になると考えられています。

アルツハイマーの原因④:遺伝子の影響

上記のほか、アルツハイマーの感受性(発症しやすさ)については、関連する様々な遺伝子型を持つグループ毎に分けてアルツハイマーの罹患率を統計的に計測すると、特定のグループでアルツハイマーの発症確率が高くなることから、遺伝子の影響を受けていると考えられています。

アルツハイマーの発症リスクが遺伝する仕組み

アルツハイマーの発症リスクが高くなるヒトは特有の遺伝子の構造(リスクアレル)をもちます。
そしてヒトは2つの同じ種類の染色体(相同染色体)をもっていますので、染色体の中に存在する遺伝子も同様に同じ種類の遺伝子が2つあり、『2つの遺伝子がリスクアレル>1つの遺伝子がリスクアレル>リスクアレルの遺伝子なし』の順番でアルツハイマーの発症リスクが高くなる傾向にあります。
ヒトは生まれる際に遺伝によって両親から1つずつ同じ種類の染色体を授かりますので、同時にアルツハイマーの発症リスクに関係する遺伝子も遺伝により両親から1つずつ授かることになり、アルツハイマーの発症リスクは遺伝することを説明することができます。

上記のアルツハイマーの発症リスクの遺伝現象をイラストで説明すると以下のとおりになります。
①父親が1つアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の1つのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
②父親が2つアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の2つのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
③父親と母親が1つずつアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、25%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の1つずつのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
④父親が2つ、母親が1つアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、残りの50%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
父親の2つのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルと母親の1つのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
⑤父親と母親が2つずつアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率でアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の2つずつのアルツハイマーの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト

アイコン「発症リスクの捉え方」

リスクアレル遺伝子はアルツハイマーの発症を100%決定づけるものではありません。

遺伝子とアルツハイマーの発症リスクの関係は統計的に調査されたものであり、リスクアレル遺伝子を持っているヒトはそうでないヒトに比べて統計的にアルツハイマーの発症リスクが高くなる傾向が見られるという意味合いに留まります。

具体的にはリスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトと、リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒト、リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトを大勢集め、それぞれのグループに分けてアルツハイマーの発症率を調べると「リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトのグループ」の順番でアルツハイマーの発症率が高くなります。

一方でグループの中のひとり一人に着目すると、リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトでアルツハイマーを発症されていない方もいらっしゃいますし、反対にリスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトでアルツハイマーを発症されている方もいらっしゃいます。

以上の理由から、リスクアレル遺伝子はアルツハイマーの発症リスクを高くする《傾向》があると理解することが大切です。

アルツハイマーの発症リスクに関係する遺伝子の検査方法

※遺伝子検査サービス会社で実施するアルツハイマーの発症リスクの具体的な評価方法はノウハウ(会社独自の技術)であり公表されておりません。
以下でご紹介する内容はVaDE(ゲノム情報データベース)やNBCD(バイオサイエンスデータベースセンター)等で公表されている内容を参照してゲノラボが独自にまとめたものであり、遺伝子検査サービス会社が実施する遺伝子検査の方法を説明したものではありませんのであらかじめご了承願います。

アルツハイマーの発症リスクに関係するリスクアレルを持つ遺伝子は複数種類存在することから、単純に1種類の遺伝子だけでアルツハイマーの発症リスクが決まるわけではなく、多数の遺伝子の内容が絡み合ってアルツハイマーの発症リスクを決定付けています。

したがって、アルツハイマーの発症リスクを評価するためには複数の遺伝子がリスクアレルかどうかを検査していくわけですが、リスクアレルの構造に該当するかどうかは遺伝子の特定の箇所に存在する塩基の種類を調べることにより確認します。

具体的には以下のとおり2つの遺伝子について検査します。

第11染色体に存在する遺伝子

第11染色体に存在するSORL1遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響によるアルツハイマーの発症リスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がチミン(T)かシトシン(C)かによってアルツハイマーの発症リスクが変わり、チミン(T)である場合はアルツハイマーになりやすい体質、シトシン(C)である場合はアルツハイマーになりにくい体質と評価されます。(つまりチミン(T)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとTT>TC>CCの順番でアルツハイマーの発症リスクが高くなります。

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九州大学が87名の日本人を対象に調査したところ、リスクアレルであるチミン(T)を持つ日本人の割合が59.5%、シトシン(C)を持つ日本人の割合が40.5%という結果になりました。
この結果を参照すると、最もアルツハイマーの発症リスクが高くなるTTの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が35.4%、TTの次にアルツハイマーの発症リスクが高いTCの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が48.1%、最もアルツハイマーの発症リスクが低くなるCCの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が16.4%となります。

第19染色体に存在する遺伝子

第19染色体に存在するAPOE遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響によるアルツハイマーの発症リスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がチミン(T)かシトシン(C)かによってアルツハイマーの発症リスクが変わり、シトシン(C)である場合はアルツハイマーになりやすい体質、チミン(T)である場合はアルツハイマーになりにくい体質と評価されます。(つまりシトシン(C)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとCC>CT>TTの順番でアルツハイマーの発症リスクが高くなります。

アルツハイマーの初期症状・前兆

「アルツハイマーの症状」でご紹介したとおり、アルツハイマーの症状として特によく見られるのが、記憶障害・見当識障害・実行機能障害・高次脳機能障害です。

これらの症状の中で、比較的アルツハイマーの初期段階でよく見られる症状を事例をもとにご紹介させていただきます。

アルツハイマーの初期症状①:最近起こった出来事を忘れてしまう

初期症状例

・数日前に遊びに出かけたことを覚えていない。
・ご飯を食べたことを覚えていない。

解説

比較的初期段階のアルツハイマーでは近時記憶(数分〜数日前の記憶)が障害されるケースが多く報告されています。
また、アルツハイマーで障害されやすい記憶の種類は「エピソード記憶(いつ・どこで・何をしたかといった記憶)」であり、アルツハイマーでは「意味記憶(言葉の意味や一般知識などの記憶)」は障害されずに保持される傾向にあります。
アルツハイマーによる物忘れは加齢による物忘れとは異なり記憶そのものがぽっかりと抜け落ちてしまうことが特徴ですので、数日間の間に起きた最近の出来事を全く覚えていない場合はアルツハイマーの初期症状を疑いましょう。

アルツハイマーの初期症状②:日時を認識できない

初期症状例

・今が何年何月何日かが分からない。
・季節にそぐわない服装をしている。

解説

アルツハイマーの初期症状としてよく報告されているのは時間の感覚がなくなってしまう時間的見当識障害です。
上記に掲げた事例のほか、時間的見当識障害によって過去の出来事そのものは記憶しているものの、その出来事がいつ起こったものなのかが分からなくなる症状が現れるケースもあります。
また、初期のアルツハイマーの段階から、街並みや建物を識別できなくなったり、また目的地と自分の位置関係がわからなくなって道に迷ってしまう地誌的見当識障害が起きる場合もあります。
これらの兆候に気づかれた場合はアルツハイマーの初期症状を疑った方が良いかもしれません。

アルツハイマーの初期症状③:今までこなせていた作業ができなくなる

初期症状例

・最近料理などの家事がうまくできなくなった。
・仕事でのミスが急に増えてきた。

解説

アルツハイマーによる脳の萎縮が前頭葉に及んだ場合、日常生活における意思決定に必要となる記憶や判断に関する能力が低下する実行機能障害が引き起こされます。
実行機能障害は比較的初期段階のアルツハイマーにおいて発生するとされていますので、今まで当たり前にこなせていたことが急にできなくなってきた場合はアルツハイマーの初期症状によるものかもしれません。

アルツハイマーを発症すると海馬を中心に脳が萎縮する傾向にあるため、記憶障害(近時記憶障害)が顕著に現れる傾向にあります。
ただしすべてのアルツハイマーの人にあてはまるものではなく、3割程度の方は海馬の萎縮が顕著ではないとも言われていますので、アルツハイマーの代表的な症状である記憶障害だけではなく、日時が認識できなくなる時間的見当識障害や今までこなせていた作業がだんだんできなくなってくる実行機能障害などの兆候にも注意が必要です。

アルツハイマーの予防方法

「高血圧」や「糖尿病」といった生活習慣病はアルツハイマーの発症リスクを高めることが分かっていますので、まず高血圧と糖尿病とアルツハイマーとの関係性を説明した上で具体的な予防方法をご紹介していきます。

高血圧とアルツハイマーの関係性

高血圧は動脈硬化を促しますので、正常血圧の方に比べて血管内が狭くなりやすい傾向にあります。
血管内が狭くなることで血液の流れが悪くなるため神経細胞に酸素や栄養が十分に届かなくなり、神経細胞が傷つき死滅する原因となりますので、高血圧はアルツハイマーのリスクを高めてしまいます。

糖尿病とアルツハイマーの関係性

糖尿病はインスリンの作用不足により血液中に流れるブドウ糖を細胞内に取り込めず、ブドウ糖が過剰に余ることによる慢性的な高血糖状態(血液中にブドウ糖が多く含まれている状態)のことを示します。
インスリンの作用不足の原因としては、「そもそも肝臓で分泌されるインスリンの量が少ないケース」と、「インスリンは適切に分泌されているものの細胞がブドウ糖を取り込んでくれないケース」が存在します。

アルツハイマーのリスクを高めるのは前者のインスリンの分泌量が少ないことを原因とした糖尿病です。
インスリンにはアルツハイマーの原因となるアミロイドβを分解する作用がありますので、インスリンの分泌量が不足するとアミロイドβが分解されずに余り、脳の神経細胞を死滅させる原因となるアミロイドβオリゴマーの生成を促してしまい、アルツハイマーのリスクを高めてしまいます。

具体的な予防方法

高血圧や糖尿病がアルツハイマーのリスクを高めてしまう理由をご理解いただけたかと思いますので、続いてアルツハイマーの具体的な予防方法をご紹介させていただきます。

習慣的な運動を取り入れる

運動を行うことによって体内でネプリライシンと呼ばれる酵素が多く分泌されるようになります。
ネプリライシンはアミロイドβを分解する役割を果たしますので、アルツハイマーの原因であるアミロイドβの過剰産生を防ぎ、アミロイドβオリゴマーの生成を抑えることができます。
また、運動中の筋肉細胞からはイリシンと呼ばれるホルモンが分泌されるようになります。
イリシンは脳の神経細胞を活発にするBDNF(脳由来神経細胞因子)という物質を増やす作用がありますので、脳の神経細胞の死滅による脳の萎縮を防ぐことができます。

アルツハイマーの予防に最適な運動は有酸素運動と言われていますので、ウォーキングやジョギング、水泳やサイクリングなどを日常的(週に3〜4回、1日30分程度が目安)に実施するようにいたしましょう。

有酸素運動はアルツハイマーの予防だけではなく、高血圧や糖尿病の予防にもつながりますので必ずや実施していただきたい習慣といえます。
普段の移動手段を徒歩や自転車に切り替えることで、簡単に日常に有酸素運動を取り入れることも可能ですので是非ご検討ください。

食生活の改善

太り過ぎは糖尿病や高血圧のリスクを高め、アルツハイマーのリスクも高めます。
今現在太り過ぎている方は高脂質・高タンパクな食生活を見直し、適正体重に戻してあげることでアルツハイマーの発症リスクを下げることができます。

ご自身の適正体重を計算されるにあたっては、BMIという数値を基準にします。
BMIは『体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))』という計算式から導き出すことができ、例えば身長が170cm、体重が70kgの方のBMIは70÷(1.7×1.7)=24.2となります。

統計的に最も病気にかかりにくいとされているBMI数値が22ですので、身長が170cmの方であれば63〜64kgぐらいの体重が病気の予防という簡単からは適正な体重といえます。

なお、アルツハイマーの予防にあたり、食事面では青魚や緑黄色野菜を積極的に摂取されることをオススメします。
青魚や緑黄色野菜には抗酸化物質を多く含まれており、細胞の老化の原因となる活性酸素の働きを抑えることができます。
アルツハイマーは脳の異常なスピードでの老化により引き起こされる病気ですので、抗酸化物質がアルツハイマーの予防に効果的であることは説明するまでもないことでしょう。

禁煙

喫煙者の方であれば、今この瞬間にできるアルツハイマーの予防方法が禁煙です。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液中の酸素を奪っていきます。
この作用によって神経細胞に届けられる酸素や栄養の量が減少していきますので、喫煙は神経細胞の死滅を加速させる行為となります。

タバコを吸われている方で多いのが、自分は大丈夫だろうという考え方だと感じています。
これは切迫して何かの病気を患っている訳ではないため、どうしてもやめなければならない理由がしっくりとこないことによるものだと考えられますが、タバコはじわじわとあなたの体を蝕んでいるということも事実です。

どうしても自分一人の力で禁煙できないという方は、今は保険診療で禁煙外来を受診することもできますので、一度検討してみても良いでしょう。

タバコは高血圧・糖尿病のリスクも高めますので、禁煙により高血圧・糖尿病のリスクも下がります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

アルツハイマーは遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合って発症する病気ですので、生活習慣を改善することでアルツハイマーの発症リスクを抑えることは可能です。
生活習慣の改善に先立って、あらかじめご自身のアルツハイマーに対する遺伝的な要因(リスクの傾向)を確認しておくこともオススメです。
現在の医療では遺伝子を変えることはできませんので、大事なのは遺伝子検査の結果を踏まえて生活習慣の改善につなげていくことです。
これからあなたが実施する生活習慣の改善のキッカケとして遺伝子検査をご検討してみてはいかがでしょうか。

また、医療の発展によって初期症状を早期に発見することができれば、薬の服用によって神経細胞の死滅やアセチルコリンの減少を抑えてアルツハイマーの進行を遅らせることが可能ですので、本人やご家族の方におかれましてはアルツハイマーの初期症状のサインを決して見逃さないことが大切です。

当サイトでは、遺伝の基本的な知識から、遺伝がカラダやココロに与える影響、遺伝と病気の関係など様々な記事をご紹介していますので、お時間がよろしければ是非他の記事もご覧いただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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