胃がんの発症に遺伝が影響する?胃がんの症状・原因・リスク遺伝子・初期症状・予防方法まとめ

はじめに胃がんは遺伝の影響を受ける病気です。

ただし、遺伝の影響で必ず胃がんを発症したり、反対に遺伝的に問題がないから絶対に胃がんを発症しないというものではありません。
胃がんは遺伝的な要因に環境的な要因が複雑に絡み合ってはじめて発症するものですので、遺伝的に胃がんを発症しやすい方であっても日頃から予防に努めることで胃がんの発症リスクを抑えることができますし、遺伝的に胃がんを発症しにくい方であっても生活習慣の影響で胃がんの発症リスクが高まります。

この記事では胃がんの基本的な知識と、遺伝が胃がんの発症リスクに影響を与える仕組み、胃がんの発症リスクに影響を与える遺伝子の検査方法、胃がんの初期症状や予防方法などについてご紹介させていただきます。

胃がんとは

ヒトが口から取り込んだ食べ物は食道⇒胃⇒小腸⇒大腸といった消化管を通って消化・吸収され排泄されます。
この中で胃は「食道から取り込まれた食べ物を一時的に貯蔵する」、「食べ物を砕いて混ぜる」、「タンパク質を消化する」、「ビタミンB12の吸収を補助するタンパク質を放出する」といった働きをしています。

胃の構造ですが、胃は大きく分けて食道と胃をつなげる「噴門部」、袋状の胃の上部を構成する「胃底部」、中部を構成する「胃体部」、下部を構成する「幽門前庭部」、胃と十二指腸をつなげる「幽門部」から構成されています。

続いて胃を形成している胃壁の構造ですが、胃壁は5層の膜から構成されており、内側から「粘膜」、「粘膜下層」、「固有筋層」、「漿膜下層」と重なっていいって、「漿膜」が胃の一番外側を覆っています。
それぞれの膜の働きを簡単に説明しますと、粘膜では胃で食べ物を消化するための消化液や粘液などを分泌し、粘膜下層には血管やリンパ管が通っていて粘膜へ酸素や栄養を運び、固有筋層では胃で食べ物を砕いて混ぜるための蠕動運動(胃をうねるように動かす運動)を促す働きをしています。漿膜下層や漿膜は胃をひとつの臓器としてまとめたり、胃を食道や十二指腸と結合させてつなぎとめる役割を果たしています。

上記から構成された胃の組織の一部に発生するがんを胃がんと呼び、胃がんの多くは胃の一番内側に存在する粘膜を形成している細胞ががん化することによって生じます。

日本人において胃がんが発生しやすい場所は胃の中部から下部までの間で、もっとも胃がんが発生しやすい箇所が幽門前庭部で胃がん全体の約40%、ついで胃がんが発生しやすい箇所が胃体部で約30%超、胃の上部に当たる胃底部は約10%超とされています。

※がんとは
ヒトの体は約37.2兆個の細胞から構成されており、新しい細胞ができては古くなった細胞と入れ替わっています。
1つの細胞が2つに分裂することで新しい細胞が作られていくわけですが、正常な細胞であれば周囲の状態を検知し必要に応じて細胞分裂を行うのに対し、がん化した細胞は際限なく分裂を繰り返し増殖していきます。がん化した細胞が分裂を繰り返した結果発生した大きなかたまりのことをがんと呼びます。

胃がんの種類

胃がんのほとんどは胃の粘膜を形成する線細胞ががん化する「線がん」であると言われています。
腺がんは胃の粘膜層に発生する上皮がんの一種ですが、その他の上皮がんはまれなケースとして捉えられています。
胃の粘膜の内部には胃粘液を分泌するための線管と呼ばれる組織が存在するのですが、腺がんではがん細胞が線管と似たような構造をつくって成長していきます。
腺がんはその形や発生する場所に応じて以下のとおり区分することができます。

分化型胃がん

腺がんの中でも成熟した線管を形成する線細胞ががん化したものを分化型胃がんと呼びます。
一般的に分化型胃がんは成長速度が遅く悪性度の低い胃がんとされており、文化型胃がんの発症者の特徴を見てみると高齢の男性に多く発症し、男性の発症者数が女性の約2倍にも及ぶといわれています。

未分化型胃がん

腺がんの中でも線管を形成する前の未成熟な線細胞ががん化したものを未分化型胃がんと呼びます。
一般的に未分化型胃がんは成長速度が早く悪性度の高い胃がんとされており、未分化型胃がんの発症者の特徴を見てみると30〜40代といった比較的若い世代が多く発症し、男性よりも女性の方が発症率が高い傾向にあるといわれています。
また、未分化型胃がんの中にはかたまり状に成長せず飛び散るように広がっていくびまん性胃がん(スキルス性胃がん)というタイプも存在し、この場合はさらに悪性度が高くなる傾向にあります。

噴門部胃がん

食道と胃をつなぐ噴門部に発生した腺がんを噴門部胃がんと呼びます。
上述したとおり胃がんの多くは胃の中部から下部で発生いたしますので、噴門部胃がんは比較的まれながんとされています。
噴門部胃がんは比較的成長速度が遅いものの検診で見つかりにくく、また噴門部に隣接する食道にがん細胞が広がると治療が難しくなる傾向にあります。

胃の上皮がんには腺がんのほか、「扁平上皮がん」、「AFP産生胃がん」、「カルチノイド腫瘍」などが存在し、胃の非上皮がんとして「悪性リンパ腫」、「形質細胞腫」、「間質腫瘍(GIST)」、「筋原性腫瘍」、「神経性腫瘍」などが存在いたしますが、この記事では胃がんのほとんどを占める腺がんを対象としてご説明させていただきますことをご了承ください。

胃がんの進行

胃の粘膜で発生したがんは粘膜層から外側に向かって粘膜下層⇒固有筋層⇒漿膜下層⇒漿膜へと広がっていきます。(これを医学用語で浸潤といいます。)

胃がんの進行の程度はこの浸潤の状況から判断され、がん細胞が粘膜の内部や粘膜下層にとどまっている場合は「早期胃がん」、がん細胞が粘膜下層を超えて固有筋層や漿膜下層、漿膜へと浸潤している場合は「進行胃がん」と判断されます。

胃がんのステージは上述の浸潤の状況に合わせ、「リンパ節への転移の状況」と「胃以外の臓器への転移の状況」を鑑みて決定され、ステージⅠからステージⅣへと細かく分類されています。

胃がんの患者数

胃がんの患者数ですが、厚生労働省の調査によると2002年は222,000人、2005年は208,000人、2008年は213,000人、2011年は186,000人、そして2014年には185,000人という患者数となっています。
胃がんの患者数の推移を表すグラフ
日本における胃がんの発症率や死亡率は欧米諸国と比べて際立って高いことも特徴で、近年患者数は減少傾向にあるものの、依然として多くの患者が存在する発症頻度の高い病気といえるでしょう。

胃がんの症状

胃がんは自覚症状が現れにくい病気ですが、胃がんの進行とともに胃を中心として全身に様々な症状が引き起こされます。

胃(上腹部)やみぞおちの断続的な痛み

胃がんの進行に伴って胃やみぞおちに痛みを感じるようになります。
特に胃がんによる痛みは食前や食後に関係なく痛む傾向にありますので、慢性的に痛みが生じる場合は胃がんの症状を疑いましょう。

貧血

胃がんの進行に伴い患部から出血が生じた場合、貧血気味となります。
出血がひどくなってくると血の気がどんどん少なくなっていって顔面蒼白となります。

吐血・下血

胃がんの進行に伴い患部から出血が生じた場合、吐血や下血(黒いタール便)が引き起こされる場合があります。

嚥下障害・胃もたれ

胃がんが胃の入り口(噴門部)付近で発生した場合に、食べ物を飲み込みにくくなる嚥下障害が現れる場合があります。
また反対に胃がんが胃の出口(幽門部)付近で発生した場合は、食後の胃もたれやゲップ、嘔吐などの症状が現れる場合があります。

胃がんの原因

医学の発展により、現在では胃がんの最大の原因はヘリコバクターピロリという細菌であることが解明されています。
この細菌は胴体から生えている足のようなものをらせん状にぐるぐると回して胃の中を動き回っており、その様子がヘリコプターのようであることから「ヘリコバクター」と、そして胃の幽門部に多く存在することから幽門部のラテン語の読みであるピロルスをとって「ピロリ」と名付けられ、合わせてヘリコバクターピロリという名称になりました。

日本における胃がんの発症率・死亡率は欧米諸国に比べて圧倒的に多いことは説明したとおりですが、昔ハワイに在住する日系人約一万人を対象にその血液を検査したところ、血液中に通常の約6倍のヘリコバクターピロリの抗体が含まれていることが発見されました。
血液中に抗体が存在するということはヘリコバクターピロリに感染している証明でもありますので、この日系人の血液検査によって日本における胃がんの発症率・死亡率の高さとヘリコバクターピロリの感染率との関係性が明らかにされました。

またその後の研究によって、ヘリコバクターピロリにも様々な種類が存在し、人体に影響を及ぼさないものから胃の粘膜を荒らすものまで色々なものがあることがわかり、ヒトにも遺伝的な体質によりヘリコバクターピロリの害を受けやすいヒトや受けにくいヒトがいることもわかってきました。

ヘリコバクターピロリが胃の粘膜を荒らす仕組みとしては以下のような原因が考えられています。
⑴ヘリコバクターピロリの約半数は「細胞空胞化毒素」を生成し、この毒素の働きによって胃の粘膜細胞を空洞にして脱落させます。
⑵ヘリコバクターピロリが自分自身を守るため胃酸を中和する目的で生成するアンモニアが胃の粘膜細胞を傷つけます。
⑶ヘリコバクターピロリに対抗するために集まってくる抗体(免疫細胞)の働きにより胃の粘膜細胞をも傷つけます。
以上のような原因から、ヘリコバクターピロリの感染によって胃の粘膜細胞が破壊され、次第に萎縮性胃炎や腸上皮化生といった胃がんの前病変を作り出し、胃がんを発症しやすい環境を作り出してしまうと考えられています。

ヘリコバクターピロリが胃がんを発症させる原因としては、上記のほかヘリコバクターピロリが注射針のようなもので胃の粘膜に注入する「空胞化毒素関連タンパク質」というものの存在も挙げられています。
この空胞化毒素関連タンパク質が胃の粘膜に注入されることによって、胃の粘膜細胞の異常な分裂が促されて細胞のがん化に繋がっていることも明らかにされています。

その他の胃がんの原因

ヘリコバクターピロリに感染していない方が胃がんを発症するケースはまれであることから、ヘリコバクターピロリは胃がんの必須条件ともいえる諸悪の根源であるといわれています。
一方でヘリコバクターピロリに感染しているすべての人が胃がんを発症するわけではありませんので、胃がんの発症にはヘリコバクターピロリの感染の有無に加えて、体質などの遺伝的な要因や生活習慣などの環境的な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

胃がんの発症リスクが遺伝する仕組み

胃がんの発症リスクが高くなるヒトは特有の遺伝子の構造(リスクアレル)をもちます。
そしてヒトは2つの同じ種類の染色体(相同染色体)をもっていますので、染色体の中に存在する遺伝子も同様に同じ種類の遺伝子が2つあり、『2つの遺伝子がリスクアレル>1つの遺伝子がリスクアレル>リスクアレルの遺伝子なし』の順番で胃がんの発症リスクが高くなる傾向にあります。
ヒトは生まれる際に遺伝によって両親から1つずつ同じ種類の染色体を授かりますので、同時に胃がんの発症リスクに関係する遺伝子も遺伝により両親から1つずつ授かることになり、胃がんの発症リスクは遺伝することを説明することができます。

上記の胃がんの発症リスクの遺伝現象をイラストで説明すると以下のとおりになります。
①父親が1つ胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の1つの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
②父親が2つ胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の2つの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
③父親と母親が1つずつ胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、25%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の1つずつの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
④父親が2つ、母親が1つ胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、残りの50%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
父親の2つの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルと母親の1つの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
⑤父親と母親が2つずつ胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率で胃がんの発症リスクを高めるリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の2つずつの胃がんの発症リスクを高めるリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト

アイコン「発症リスクの捉え方」

リスクアレル遺伝子は胃がんの発症を100%決定づけるものではありません。

遺伝子と胃がんの発症リスクの関係は統計的に調査されたものであり、リスクアレル遺伝子を持っているヒトはそうでないヒトに比べて統計的に胃がんの発症リスクが高くなる傾向が見られるという意味合いに留まります。

具体的にはリスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトと、リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒト、リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトを大勢集め、それぞれのグループに分けて胃がんの発症率を調べると「リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトのグループ」の順番で胃がんの発症率が高くなります。

一方でグループの中のひとり一人に着目すると、リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトで胃がんを発症されていない方もいらっしゃいますし、反対にリスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトで胃がんを発症されている方もいらっしゃいます。

以上の理由から、リスクアレル遺伝子は胃がんの発症リスクを高くする《傾向》があると理解することが大切です。

胃がんの発症リスクに関係する遺伝子の検査方法

※遺伝子検査サービス会社で実施する胃がんの発症リスクの具体的な評価方法はノウハウ(会社独自の技術)であり公表されておりません。
以下でご紹介する内容はVaDE(ゲノム情報データベース)やNBCD(バイオサイエンスデータベースセンター)等で公表されている内容を参照してゲノラボが独自にまとめたものであり、遺伝子検査サービス会社が実施する遺伝子検査の方法を説明したものではありませんのであらかじめご了承願います。

胃がんの発症リスクを評価するためには該当の遺伝子がリスクアレルかどうかを検査していくわけですが、リスクアレルの構造に該当するかどうかは遺伝子の特定の箇所に存在する塩基の種類を調べることにより確認します。

具体的には以下のとおり該当の遺伝子について検査します。

第10染色体に存在する遺伝子

第10染色体に存在するPLCE1遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響による胃がんの発症リスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がチミン(T)かシトシン(C)かによって胃がんの発症リスクが変わり、シトシン(C)である場合は胃がんになりやすい体質、チミン(T)である場合は胃がんになりにくい体質と評価されます。(つまりシトシン(C)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えると CC>CT>TTの順番で胃がんの発症リスクが高くなります。

胃がんについては上述したリスク遺伝子のほか、以下のとおり様々な種類の胃がんの発症リスクと関連した遺伝子を検査していきます。

分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクに関係する遺伝子の検査方法

分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクを評価するために以下のとおり該当の遺伝子について検査します。

第6染色体に存在する遺伝子

第6染色体に存在するLRFN2遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響による分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がアデニン(A)かグアニン(G)かによって分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクが変わり、アデニン(A)である場合は分化型胃がん(非噴門部胃がん)になりやすい体質、グアニン(G)である場合は分化型胃がん(非噴門部胃がん)になりにくい体質と評価されます。(つまりアデニン(A)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとAA>AG>GGの順番で分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクが高くなります。

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九州大学が87名の日本人を対象に調査したところ、リスクアレルであるアデニン(A)を持つ日本人の割合が36.9%、グアニン(G)を持つ日本人の割合が63.1%という結果になりました。
この結果を参照すると、最も分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクが高くなるAAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が13.6%、AAの次に分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクが高いAGの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が46.5%、最も分化型胃がん(非噴門部胃がん)の発症リスクが低くなるGGの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が39.8%となります。

未分化型胃がん・びまん性胃がんの発症リスクに関係する遺伝子の検査方法

未分化型胃がん・びまん性胃がんの発症リスクを評価するために以下のとおり該当の遺伝子について検査します。

第8染色体に存在する遺伝子

第8染色体に存在するPSCA遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響による未分化型胃がん・びまん性胃がんの発症リスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がチミン(T)かシトシン(C)かによって未分化型胃がん・びまん性胃がんの発症リスクが変わり、チミン(T)である場合は未分化型胃がん・びまん性胃がんになりやすい体質、シトシン(C)である場合は未分化型胃がん・びまん性胃がんになりにくい体質と評価されます。(つまりチミン(T)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとTT>TC>CCの順番で未分化型胃がん・びまん性胃がんの発症リスクが高くなります。

噴門部胃がんの発症リスクに関係する遺伝子の検査方法

噴門部胃がんの発症リスクを評価するために以下のとおり該当の遺伝子について検査します。

第10染色体に存在する遺伝子

第10染色体に存在するPLCE1遺伝子の特定の位置の塩基(※)を確認することで、遺伝子の影響による噴門部胃がんの発症リスクを検査できます。
※ 噴門部胃がんの発症リスクと関連する遺伝子も胃がんの発症リスクに関連する遺伝子と同じものとなりますが、確認する塩基の位置が異なります。
該当の位置に存在する塩基がアデニン(A)かグアニン(G)かによって噴門部胃がんの発症リスクが変わり、グアニン(G)である場合は噴門部胃がんになりやすい体質、アデニン(A)である場合は噴門部胃がんになりにくい体質と評価されます。(つまりグアニン(G)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとGG>GA>AAの順番で噴門部胃がんの発症リスクが高くなります。

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九州大学が87名の日本人を対象に調査したところ、リスクアレルであるグアニン(G)を持つ日本人の割合が21.4%、アデニン(A)を持つ日本人の割合が78.6%という結果になりました。
この結果を参照すると、最も噴門部胃がんの発症リスクが高くなるGGの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が4.5%、GGの次に噴門部胃がんの発症リスクが高いGAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が33.6%、最も噴門部胃がんの発症リスクが低くなるAAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が61.7%となります。

胃がんの初期症状・前兆

胃がんは自覚症状が現れづらく、初期段階で非常に気づきにくい病気のひとつとされていますが、早期で胃がんを発見された方の多くが感じた違和感に胃がんの初期症状のヒントがあります。

胃(上腹部)の違和感

胃がんの初期症状としては胃の違和感が挙げられます。
胃がんの初期症状で胃が猛烈に痛くなるといった症状が現れるケースはまれで、何となく胃のあたりの調子が悪いといった不定愁訴とも呼ぶべき症状が現れるのが特徴です。

自分が健康な状態にある時を思い浮かべていただければ何となく想像がつくのではないかと思いますが、通常私たちが生活している中で「胃の存在を意識する」ことはあまりありません。
しかし胃がんを患った多くの方は胃の存在を強く意識したり、何となく上腹部がすっきりとしないといった漠然とした調子の悪さを感じたといった声が多く挙がっています。

実際に上記のような胃の不快感をきっかけに早期の胃がんが発見されるケースが多く報告されていますので、痛みが出ていないから問題ないと考えるのではなく、何らかの違和感を感じたら病院で受診されることをオススメします。

体重の減少

胃の違和感の次に胃がんの初期症状として現れやすいものとして体重の減少も挙げられます。
胃がんを発症すると胃の漠然とした違和感によって食欲が減少する傾向にありますので、体重の減少も胃がんの初期症状として多く報告されています。
こまめに体重を計るなどして体重の変化にも注意しましょう。

胃がんの予防方法

上述してきたとおり、胃がんの発症はヘリコバクターピロリの感染の有無と、ヘリコバクターピロリの害の受けやすさといった体質などの遺伝的な要因、そして生活習慣などの環境的な要因が複雑に絡み合って発症することがわかっています。

これらの要因のうち生活習慣などの環境的な要因についてはこの記事をご覧いただいた今から改善ができ、胃がんの予防につなげることができるものですので、以下で生活習慣から考える胃がんの発症リスクを抑える予防方法をご紹介いたします。

禁煙

国立がん研究センターによる統計的な喫煙と胃がんの関連性の研究の結果、タバコを吸っている男性はタバコを吸ったことのない男性に比べて胃がんの発症リスクが1.8倍も高く、女性の場合は1.2倍高くなり、男女全体で1.6倍胃がんのリスクが高くなることが明らかにされており、喫煙により確実に胃がんのリスクが高くなると結論づけられています。

喫煙により胃がんのリスクが高くなる仕組みとしては、喫煙が引き起こす胃の粘膜細胞への酸素や栄養の不足にあると考えられています。
胃の粘膜細胞には毛細血管が張り巡らされており、この毛細血管により胃の粘膜細胞に酸素や栄養を届けています。
一方でタバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、また一酸化炭素が酸素と結びついてしまうため血液中の酸素を減少させてしまいます。
上記の理由から喫煙が胃の粘膜細胞の酸欠・栄養不足を引き起こし、胃の粘膜の抵抗力を低下させて胃がんのリスクを高めるとされています。

ヘリコバクターピロリよりも喫煙の方が大きな胃がんのリスク因子となると考えている研究者も存在するほどであり、喫煙者の方が一番効果的にできる胃がんの予防策が禁煙となります。

喫煙は胃がん以外のがんや脳卒中・心筋梗塞などのリスクも高めますので、百害あって一利なしです。
本当に胃がんを予防したいのであれば今すぐ禁煙をしましょう。

減塩

厚生労働省が1990年から10年間にわたり日本国内の40〜50代の男女約4万人を対象に食生活と胃がんとの関連についてデータを収集し、期間中に胃がんを発症した男性285人・女性115人の食生活を調査したところ、日本の伝統食であるイカの塩辛・ウニ・イクラ・タラコといった塩分を多く含む塩蔵魚介類をほぼ毎日食べているヒトは、サラダなどの非伝統型の食事をとっていたヒトに比べると、胃がんの発症リスクが男性で2.9倍、女性で2.4倍も高くなることが明らかになりました。

また日本は欧米に比べ塩分を大量に摂取する傾向にあることも、欧米に比べて日本で胃がんの発症率が高い傾向とも合致します。
この傾向は、厚生労働省が設定している1日あたり塩分摂取量の目標値は8gであるのに対し、WHO(世界保険機構)が設定している1日あたり塩分摂取量の目標値は5gであることからも分かります。

塩分の過剰摂取と胃がん発症リスクには一定の関係性が見受けられますので、胃がんの予防という観点からはひとつの目安として1日あたりの塩分摂取量を8g以内に、可能であればさらなる減塩を目指していきましょう。

野菜・果物の摂取

上記と同様の厚生労働省が1990年から10年間実施した調査によると、野菜や果物を食べる習慣のある方は、そうではない方に比べて胃がんの発症率が低いことがわかっています。
具体的には、上記で説明した喫煙や塩分の摂取量などの他のリスク因子が影響しない様に調整した上で、野菜や果物を定期的に食べる習慣のある方とそうではない方の胃がんの発症率を比較した結果、以下のとおり発症率が低くなることが認められました。
⑴淡色野菜(緑黄色野菜以外の野菜)をほぼ毎日摂取する習慣がある方は、そうではない方と比べて胃がんの発症率が約51%低い。
⑵黄色野菜をほぼ毎日摂取する習慣がある方は、そうではない方と比べて胃がんの発症率が約46%低い。
⑶果物をほぼ毎日摂取する習慣がある方は、そうではない方と比べて胃がんの発症率が約30%低い。
⑷緑色野菜をほぼ毎日摂取する習慣がある方は、そうではない方と比べて胃がんの発症率が約25%低い。

野菜にはビタミンやカロテノイド(カロチノイド)など抗酸化作用をもつ栄養素が多く含まれていますので、これらの栄養素が胃がんの諸悪の根源であるヘリコバクターピロリによる細胞の破壊を抑え、胃がんの発症率の低下をもたらしているのではないかと考えられています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

胃がんは自覚症状が少ない病気と言われており、気づいた時には胃がんが進行しているケースが多く見受けられます。
早期の胃がんで強い痛みを感じることはまれで、早期の胃がんに気づかれた方の多くは「なんとなく胃の調子が悪い」、「なんとなく胃に違和感を感じる」といった様な軽い症状がキッカケとなっていますので、胃がんを早期に発見するためには軽い症状を見逃さないことが大切といえるでしょう。

また、特定の遺伝子の型を持っている方は統計的に胃がんを発症しやすい傾向にありますが、特定の遺伝子型だからといって必ず胃がんを発症するというものではなく、また生活習慣を改善することで胃がんの発症リスクを下げることも可能ですので、生活習慣を改善するキッカケとして遺伝子検査サービスを利用するのも良い方法だといえるでしょう。

当サイトでは遺伝の基本的な説明の他、遺伝がカラダやココロ、病気の発症に与える影響など様々な記事をご紹介していますので、お時間がよろしければ是非他の記事もご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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