高血圧は遺伝が影響している?高血圧の合併症・原因・リスク遺伝子・予防方法まとめ

はじめに、高血圧は遺伝の影響を受ける病気です。

ただし、遺伝だから必ず高血圧になったり、反対に遺伝的に大丈夫だから絶対高血圧にならないという性質のものではありません。
遺伝が与える影響はあくまでも高血圧へのなりやすさであり、遺伝的に発症しやすい体質の方であっても日頃から予防に努めることで高血圧を防ぐことはできますし、反対に遺伝的に発症しにくい体質の方であっても生活習慣の影響で高血圧のリスクは高まります。

この記事では高血圧の基本的な知識と、遺伝が高血圧のリスクに影響を与える仕組み、高血圧のリスクに影響を与える遺伝子の検査方法、高血圧の予防方法などについてご紹介させていただきます。

高血圧とは

血液には酸素や栄養素などのヒトの生命活動に必要不可欠な物質が溶け込んでいます。

その血液を体中にくまなく届けるために、心臓から頭や手足のすみずみにいたるまで血管が張りめぐらされているわけですが、地球上には重力が存在するため血液は何もしなければ低いところから高いところへ流れてくれません。

上記の理由から、どのような体勢をしているときであっても体中のすみずみまで血液を送り込むために機能するのが心臓であり、心臓は拡張と収縮を繰り返すことで血液に圧力をかけるポンプの役割を果たして血液を押し出しています。

血圧とは心臓に押し出された血液が血管の内壁に及ぼす圧力のことを指し、高血圧とはこの圧力が一定の基準値よりも高くなっている状態を指します。

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参考「血液の循環サイクル」
心臓から押し出された血液は、心臓の左心室から大動脈をとおり頭部・上半身・下半身の動脈へと押し出されていきます。
動脈へ押し出された血液は動脈の末端に存在する毛細血管へと進んでいき、毛細血管にて臓器などに酸素や栄養素を受け渡し、代わりに二酸化炭素や老廃物を受け取って静脈をとおって心臓の右心室に戻ります。
続いて心臓の右心室を介して肺に血液が運ばれ、ここで二酸化炭素と酸素を交換して左心室へ戻り、血液はこのサイクルを繰り返します。

上述したとおり、心臓がポンプのように拡張と収縮を繰り返すことで血液に圧力がかかり、重力に関係なく血液が体中のすみずみまで巡っていきます。

石油ストーブに灯油を入れるためのポンプを想像していただくと分かりやすいかと思います。
ポンプを強く握ると管内で灯油が勢いよく押し出されてタンクに運ばれ、握るのをやめると押し出されていた灯油の勢いは弱まります。

心臓でも同じで、心臓がグッと縮んだときに血液は勢いよく大動脈に流れ込みますので、血管にかかる血液の圧力は高くなります。このときの圧力を最高血圧(収縮期血圧)といいます。
反対に心臓が膨らむと、血液の流れが緩やかになりますので、血管にかかる血液の圧力は低くなります。このときの圧力を最低血圧(拡張期血圧)といいます。

高血圧の基準値

高血圧の基準値は日本高血圧学会が公表している「高血圧治療ガイドライン」で以下のとおり定められています。

分類 最高血圧(mmHg) 最低血圧(mmHg)
至適血圧(※) 120未満 80未満
正常血圧 120〜130 80〜85
正常高値血圧 130〜140 85〜90
Ⅰ度高血圧 140〜160 90〜100
Ⅱ度高血圧 160〜180 100〜110
Ⅲ度高血圧 180以上 110以上

※至適血圧とは、正常血圧の方に比べてさらに病気を合併するリスクが低い理想的な血圧の状態をいい、正常血圧の方よりもさらに長寿になる傾向が高いとされています。

Ⅰ度高血圧から高血圧となりますので、最高血圧が140mmHgを超えるか最低血圧が90を超えると高血圧と診断されます。

基準値は年齢や合併している病気によって以下のとおり異なります。
・後期高齢者:最高血圧150mmHg、最低血圧90mmHg
・糖尿病患者:最高血圧130mmHg、最低血圧80mmHg
・CKD患者:最高血圧130mmHg、最低血圧80mmHg

なお、上記は病院で血圧を測る場合の基準値です。
病院で血圧を測る場合は緊張して血管が収縮し血圧が高くなるのに比べて、家庭で血圧を測る際はリラックスして血管が拡張して血圧が低くなる傾向にあり、家庭で血圧を測る際の高血圧の基準値は最高血圧・最低血圧ともに5mmHgを引いた数値が基準値となりますのでご注意ください。

高血圧の種類

高血圧は大きく以下の2つの種類に分けることができます。
それぞれの高血圧の具体的な原因は『高血圧の原因』で説明させていただきます。

本態性高血圧

本態性高血圧とは原因となる病気が存在しない高血圧のことを指します。
高血圧全体の90%程度が本態性高血圧であると言われています。

二次性高血圧

二次性高血圧とは特定の病気の影響で引き起こされている高血圧のことを指します。
高血圧全体の10%程度が二次性高血圧であると言われています。
高血圧の患者数の推移を表したグラフ
高血圧の患者数ですが、厚生労働省の調査によると2002年は6,985,000人、2005年は7,809,000人、2008年は7,967,000人、2011年は9,067,000人、そして2014年には10,108,000人という患者数となっています。従来から患者数が多い疾患でしたが、さらに年々患者数が増加している非常に発症頻度の高い病気です。また、下記のグラフはあくまでも病院で受診されている方の統計であり、日本には高血圧の方が4,000万人以上いらっしゃるといわれていますので、高血圧予備軍の方も含めると日本人の3分の1の方は高血圧やその予備軍に該当していることになります。

高血圧の合併症

高血圧は動脈硬化を引き起こす原因となります。
高血圧により引き起こされる動脈硬化は大きく2つに分けて、高血圧により血管に高い圧力がかかり続けることにより細動脈壁が厚くなって血管内部が狭くなってしまう『細動脈硬化』と、高血圧により血管内壁に傷がついてしまうことにより内壁にコブのようなものができて血管内部が狭くなってしまう『粥状動脈硬化』があり、これらの動脈硬化を原因として重大な合併症を発症させる危険があります。
以下では代表的な高血圧の合併症をご紹介いたします。

脳卒中

高血圧と最も関係性が強く、高血圧の合併症として第一に挙げられるのが脳卒中です。
脳卒中は大きく脳出血・くも膜下出血・脳梗塞に分けることができますので、それぞれの病気別に高血圧との関係を説明いたします。
①脳出血
脳出血とは脳内の血管が破れることによって脳の中で出血が引き起こされた状態をさしますが、この脳出血の大半は脳内の細動脈が破れることが原因です。
上述したとおり、高血圧によって細動脈硬化が引き起こされると細動脈内部が狭くなってしまいますので、高血圧が細動脈が破れてしまう大きな原因のひとつと言われています。
②くも膜下出血
脳出血が脳の中で出血を引き起こしているのに対し、くも膜下出血は脳を包むくも膜と軟膜と呼ばれる髄膜の間のくも膜下腔で出血が引き起こされた状態をさします。
くも膜下出血はくも膜下腔に存在する血管の動脈瘤(コブのように変形してしまった血管)や動脈硬化の影響により、その血管が破裂してしまうことが原因とされています。
動脈瘤については必ずしも高血圧と関係するものではありませんが、高血圧による動脈硬化などでもくも膜下出血が引き起こされるリスクが高くなります。
③脳梗塞
脳梗塞とは、脳の栄養を送る血管が詰まり脳細胞が壊死してしまう状態をさします。
血管が詰まる場所や原因に応じて、脳の細い血管が詰まることにより起こる『ラクナ梗塞』、脳の太い血管が詰まることにより起こる『アテローム血栓性脳梗塞』、心臓で生じた血栓が血液で運ばれて脳の血管で詰まることにより起こる『心原性脳塞栓症』に分類されています。
心原性能塞栓症は必ずしも高血圧の影響と言えるものではありませんが、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は脳の細い血管や太い血管が動脈硬化を引き起こして狭くなっていることが引き金となります。

狭心症・心筋梗塞

心臓はポンプのように収縮を繰り返し血液を体中に送り出していますが、心臓を収縮させている組織が心筋と呼ばれる筋肉です。
心筋には冠動脈を通して酸素や栄養素を運んでいるわけですが、高血圧によって動脈硬化が起きて冠動脈の内部が狭くなり、一時的に血流が止まってしまい心筋が働けなくなると狭心症を引き起こします。
そして、冠動脈の血流が長時間途絶え、心筋が壊死してしまっている状態になると心筋梗塞が引き起こされます。

心肥大

高血圧によって動脈硬化が進むと、心臓は体の隅々まで血液を送り届けるためにより強い力で血液を送り出すようになります。
心臓はその負担を軽減するために筋肉量を増やし、大部分が心筋で構成された心臓の壁が厚くなり、これを心肥大と呼びます。
一方で心臓に送られている酸素や栄養素は一定ですので、筋肉量が増えた心臓は次第に酸素・栄養不足に陥り機能が低下していき最終的には心不全を引き起こします。

腎硬化症

高血圧によって腎臓に酸素や栄養素を運んでいる細動脈に動脈硬化が起こると、血流が悪くなることで酸素や栄養素が不足し腎臓の機能の低下を招く腎硬化症を引き起こします。
高血圧によって引き起こされる腎臓の病気の中で一番多いのがこの腎硬化症であり、腎硬化症をそのままにしておくと腎不全へと進んでいきますので注意が必要です。

脳血管性認知症

高血圧によって脳の血管に動脈硬化が引き起こされて小さな脳梗塞がいくつもできたり、脳卒中の後遺症によって脳血管性認知症が引き起こされます。

高血圧の原因

本態性高血圧と二次性高血圧の原因について説明させていただきます。

二次性高血圧の原因

まずは具体的に原因となる病気が存在する二次性高血圧から説明させていただきます。
二次性高血圧は原因となる病気が明確に存在する高血圧ですので、その病気を治療することで高血圧の症状も改善されます。

腎性高血圧

二次性高血圧の中で比較的多いのが腎臓機能の異常によって引き起こされる腎性高血圧です。
腎性高血圧は腎実質性高血圧と腎血管性高血圧に分けることができ、腎性高血圧は糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎が原因で引き起こされ、腎血管性高血圧は腎動脈の動脈硬化、腎動脈の内径が狭くなることが原因で引き起こされます。

内分泌性高血圧

内分泌性高血圧はホルモンの異常で引き起こされる二次性高血圧です。
内分泌性高血圧は腎臓の上部に存在する副腎と呼ばれる部位の異常が原因で引き起こされます。
具体的には、副腎皮質の良性腫瘍・悪性腫瘍・過形成などにより副腎から過剰にアルドステロンと呼ばれるホルモンが分泌され高血圧を引き起こす『原発性アルドステロン症』、副腎から過剰にコルチコイドと呼ばれるホルモンが分泌され高血圧を引き起こす『クッシング症候群』、副腎の髄質と呼ばれる部位に腫瘍が発生し、アドレナリンやノルアドレナリンが過剰に分泌され高血圧を引き起こす『褐色細胞腫』などが内分泌性高血圧の原因として挙げられます。

大動脈障害による高血圧

大動脈障害により二次性高血圧が引き起こされる場合もあります。
具体的には、心臓から血液が送り出されるときに開き、心臓に血液が戻ってくるときに閉じるはずの弁が閉じなくなる影響で心臓が過剰に血液を送り出してしまい高血圧を引き起こす『大動脈弁閉鎖不全症』、大動脈の一部が細く形成されているため高血圧を引き起こす『大動脈縮搾症』などが大動脈障害による高血圧の原因とされています。

本態性高血圧の原因

続いて本態性高血圧の原因ですが、上述したとおり本態性高血圧は二次性高血圧と異なり原因となる病気が存在していません。
そのため、本態性高血圧の原因は『遺伝による生まれ持った体質』と『生活習慣などの環境要因』が複雑に絡み合っていると考えられています。
生まれつき血圧が高めのヒトもいれば、血圧が低いヒトもいらっしゃるように、生まれ持った体質により本態性高血圧になりやすい方はいらっしゃいます。
しかし、遺伝の影響でたちまち本態性高血圧になってしまうというものではなく、生活習慣が本態性高血圧の発症に大きく影響します。
本態性高血圧の原因となる代表的な生活習慣は以下に列挙いたします。

塩分の過剰摂取

高血圧の治療では、食事に含まれる塩分の量を6g以下にすることを定めているとおり、塩分の過剰摂取は高血圧の代表的な原因となります。
塩分を過剰に摂取しすぎると血中のナトリウム濃度が増加し、これを薄めるために体内の水分が血管に移動して血液の量を増加させます。
以上のとおり、塩分の過剰摂取は血液量の増加を引き起こすため高血圧の原因となります。

肥満

肥満体質は血液中の脂肪量を増加させて、動脈硬化を引き起こしやすくするため高血圧の原因となります。
また内臓脂肪が肥大化すると、血圧を下げるアディポネクチンの分泌量が低下してしまうため高血圧の原因となります。

過度な飲酒

お酒を飲むと顔が赤くなることから分かるとおりアルコールには血管を拡張させて血液のめぐりを良くして血圧を下げる効果があります。
一方で、お酒を飲み過ぎてしまうとだんだんと顔が青ざめてくるように、過剰な飲酒は逆に血管を収縮させる作用を引き起こして高血圧の原因となります。
また、過度な飲酒が習慣化すると中性脂肪の増加、善玉コレステロールの低下により動脈硬化を引き起こし慢性的な高血圧につながりますので、お酒は嗜む程度にし過度な飲酒を控えるようにしましょう。

喫煙

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、また一酸化炭素により酸欠状態が引き起こされて体内の血流量が増加するため、高血圧の原因となります。
ニコチンによって収縮した血管に、量が増加した血液が流れ込むわけですので、高血圧になってしまうことは容易に想像できるかと思います。
お酒とは異なり、嗜む程度のタバコであっても高血圧には何一ついい影響を与えません。

高血圧に影響を与える代表的な生活習慣は以上のとおりです。
続いて高血圧と遺伝の影響との関係性について説明いたします。

高血圧が遺伝する仕組み

高血圧の傾向にある方は特有の遺伝子の構造(リスクアレル)をもちます。
そしてヒトは2つの同じ種類の染色体(相同染色体)をもっていますので、染色体の中に存在する遺伝子も同様に同じ種類の遺伝子が2つあり、『2つの遺伝子がリスクアレル>1つの遺伝子がリスクアレル>リスクアレルの遺伝子なし』の順番で高血圧体質になる傾向にあります。
ヒトは生まれる際に遺伝によって両親から1つずつ同じ種類の染色体を授かりますので、同時に血圧の高さに関係する遺伝子も遺伝により両親から1つずつ授かることになり、高血圧の体質が遺伝することを説明することができます。

上記の高血圧の遺伝現象をイラストで説明すると以下のとおりになります。
①父親が1つ高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の1つの高血圧をもたらすリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
②父親が2つ高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝します。
父親の2つの高血圧をもたらすリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
③父親と母親が1つずつ高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、25%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の1つずつの高血圧をもたらすリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
④父親が2つ、母親が1つ高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒50%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が1つ子に遺伝し、残りの50%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
父親の2つの高血圧をもたらすリスクアレルと母親の1つの高血圧をもたらすリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト
⑤父親と母親が2つずつ高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)を持つケース
⇒100%の確率で高血圧をもたらすリスクアレル遺伝子(染色体)が2つ子に遺伝します。
両親の2つずつの高血圧をもたらすリスクアレルが子に遺伝する様子を示したイラスト

アイコン「発症リスクの捉え方」

リスクアレル遺伝子は高血圧の発症を100%決定づけるものではありません。

遺伝子と高血圧の発症リスクの関係は統計的に調査されたものであり、リスクアレル遺伝子を持っているヒトはそうでないヒトに比べて統計的に高血圧の発症リスクが高くなる傾向が見られるという意味合いに留まります。

具体的にはリスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトと、リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒト、リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトを大勢集め、それぞれのグループに分けて高血圧の発症率を調べると「リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つ持っているヒトのグループ>リスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトのグループ」の順番で高血圧の発症率が高くなります。

一方でグループの中のひとり一人に着目すると、リスクアレル遺伝子を2つ持っているヒトで高血圧を発症されていない方もいらっしゃいますし、反対にリスクアレル遺伝子を1つも持っていないヒトで高血圧を発症されている方もいらっしゃいます。

以上の理由から、リスクアレル遺伝子は高血圧の発症リスクを高くする《傾向》があると理解することが大切です。

高血圧をもたらす遺伝子の検査方法

※遺伝子検査サービス会社で実施する高血圧の発症リスクの具体的な評価方法はノウハウ(会社独自の技術)であり公表されておりません。
以下でご紹介する内容はVaDE(ゲノム情報データベース)やNBCD(バイオサイエンスデータベースセンター)等で公表されている内容を参照してゲノラボが独自にまとめたものであり、遺伝子検査サービス会社が実施する遺伝子検査の方法を説明したものではありませんのであらかじめご了承願います。

高血圧をもたらすリスクアレルを持つ遺伝子は複数種類存在することから、単純に1種類の遺伝子だけで高血圧のリスクが決まるわけではなく、多数の遺伝子の内容が絡み合って高血圧へのなりやすさを決定付けています。

したがって、高血圧のリスクを評価するためには複数の遺伝子がリスクアレルかどうかを検査していくわけですが、リスクアレルの構造に該当するかどうかは遺伝子の特定の箇所に存在する塩基の種類を調べることにより確認します。

具体的には以下のとおり2つの遺伝子について検査します。

第12染色体に存在する遺伝子

第12染色体に存在するATP2B1遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響による高血圧のリスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がアデニン(A)かグアニン(G)かによって高血圧のリスクが変わり、グアニン(G)である場合は拡張期血圧(最低血圧)が高い傾向が見られ高血圧になりやすい体質、アデニン(A)である場合は高血圧になりにくい体質と評価されます。(つまりグアニン(G)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとGG>GA>AAの順番で高血圧のリスクが高くなります。

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九州大学が87名の日本人を対象に調査したところ、リスクアレルであるグアニン(G)を持つ日本人の割合が62.8%、アデニン(A)を持つ日本人の割合が37.2%という結果になりました。
この結果を参照すると、最も高血圧のリスクが高くなるGGの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が39.4%、GGの次に高血圧のリスクが高いGAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が46.7%、最も高血圧のリスクが低くなるAAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が13.8%となります。

第16染色体に存在する遺伝子

第16染色体に存在するUMOD遺伝子の特定の位置の塩基を確認することで、遺伝子の影響による高血圧のリスクを検査できます。
該当の位置に存在する塩基がアデニン(A)かグアニン(G)かによって高血圧のリスクが変わり、アデニン(A)である場合は高血圧になりやすい体質、グアニン(G)である場合は高血圧になりにくい体質と評価されます。(つまりアデニン(A)がリスクアレルとなります。)
したがって、親から遺伝により1つずつ継承した2つの遺伝子の塩基の組み合わせ(遺伝子型)で考えるとAA>AG>GGの順番で高血圧のリスクが高くなります。

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九州大学が87名の日本人を対象に調査したところ、リスクアレルであるアデニン(A)を持つ日本人の割合が95.3%、グアニン(G)を持つ日本人の割合が4.7%という結果になりました。
この結果を参照すると、最も高血圧のリスクが高くなるAAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が90.8%、AAの次に高血圧のリスクが高いAGの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が8.9%、最も高血圧のリスクが低くなるAAの遺伝子の組み合わせをもつ日本人の割合が0.2%となります。

高血圧の予防方法

はっきりとした原因となる病気が存在しない本態性高血圧ですが、上述してきたとおり遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合って発症していることが分かっています。
このうち遺伝的な要因については現代の医療で改善することは困難ですが、環境的な要因を改善することにより本態性高血圧を予防することはできます。
本態性高血圧の原因でご紹介させていただいた内容と重複する部分もございますが、以下に予防法をまとめましたので日常生活に取り入れてみてください。

食生活の改善

まずは食生活の改善に努めていきましょう。
ポイントは『減塩』と『カロリー制限』です。

減塩

高血圧の原因で説明させていただいたとおり、塩分の過剰摂取は血液中のナトリウム濃度の上昇を引き起こし、血液量の増加を促します。
そして血液の量が増えてしまうとそのぶん血管の内壁にかかる圧力も大きくなってしまいますので高血圧を引き起こす大きな要因となります。
したがって高血圧を予防するためには塩分を控えることが重要です。

具体的には、健康な方の1日あたりの塩分摂取量は10g以内とされていますが、血圧を下げるためには1日あたりの塩分摂取量を6g未満に下げることが目標値となります。

1日6g未満というと相当薄味に感じるはずですので、いきなり6g未満に減らすのではなく徐々に減らしていくことが成功のカギとなります。

合わせて、ただ単に塩分を少なくしていくとご飯が薄味になるだけですので、塩分の含有量が少ない調味料を積極的に活用して味付けを工夫していきましょう。
ご参考までに、以下の表に塩分の含有量が比較的少ない調味料を列挙させていただきます。

調味料 小さじ1杯あたり塩分量
マヨネーズ 0.1g
トマトケチャップ 0.2g
中濃ソース
濃厚ソース
0.3g
甘みそ 0.4g
減塩しょうゆ 0.5g
ウスターソース 0.5g

カロリー制限

上記と合わせて、高血圧の原因となる肥満を予防・改善するため1日あたりのカロリー摂取量を制限していきますが、まずは自分の理想の体重を把握しましょう。

ここでは理想の体重は有病率が一番低い(一番病気にかかりにくい)とされている体重を指し、BMIという数値が22位の方が一番有病率が低いとされていますので、この数値を目標にしましょう。

BMIは『体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))』という計算式で導き出すことができます。
身長が170cmで体重が75kgの方であれば75÷(1.7×1.7)という計算式になりますので、75÷2.89=25.95というBMI数値になります。
この方は理想のBMI数値よりも高めですので、カロリー制限によって体重を落としてBMIを22に近づけていくようにしていきます。

続いてカロリー制限にあたっては、まず1日当たりの標準のカロリー量を計算していきます。
一般的に、デスクワークなど1日を通して運動量が少ない方で1日あたり摂取カロリーが体重(kg)×25〜30キロカロリー、立ち仕事の多い標準的な運動量の方で体重(kg)×30〜35キロカロリー、力仕事の多い運動量の多い方で体重(kg)×35キロカロリー以上と言われています。
例えば上記で例に挙げている方が標準的な運動量だとした場合、1日当たりの標準的な摂取カロリーは2,250〜2,625キロカロリーとなります。

このカロリーを普通に取ってしまうと体重は減少していきません。
摂取カロリーを標準的な摂取量よりも少なくすることで摂取カロリーが足りない状態になりますので、足りない分は脂肪から補われ体重が減少していきます。
上述した22というBMI数値を利用するのも良い方法で、自分の身長に合わせてBMI22の方の体重を求めることで理想的な体重の方の1日当たりの摂取カロリーを求めることも可能です。

理想の体重を求めるための計算式は『(身長(m)×身長(m))×22』で、上記で例に挙げている方であれば(1.7×1.7)×22⇒2.89×22=63.58kgとなります。
63.58kgの方で標準的な運動量の方の1日当たり摂取カロリーの目安は63.58×30〜35=1,907〜2,225キロカロリーとなりますので、このカロリーを摂取を目安にしても良いでしょう。
ただし、あまりにも理想体重と現在の体重がかけ離れている場合、急激にカロリーを落としすぎると低血糖症などを引き起こしてしまう危険性もありますので、この場合は無理をせず徐々に体重を落としていくことをオススメします。

運動の実施

高血圧を予防するために、運動を実施することも有効な手段です。

高血圧を予防するための運動に最適なのは、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの激しく体を動かさない有酸素運動です。
筋肉トレーニングなどの無酸素運動は反対に血圧を上げてしまい、心臓に負担をかけてしまいますので高血圧の予防には適していません。
また、すでに血圧が180mmHg以上のⅢ度高血圧の方は、まず降圧剤などで血圧を下げてから医師のアドバイスのもと運動するようにしましょう。

有酸素運動を実施するとカラダが酸素を求めるようになりますので、多く取り込もうと血管を拡張し、結果的に血圧が低下します。
習慣的に有酸素運動を実施することで、血管が拡張する機会が増えて柔らかくなりますので、動脈硬化の予防にもつながります。
また有酸素運動によって代謝が良くなりますので、高血圧の原因である肥満の予防にもつながります。

健康的な人生を送っていくにあたって適度な運動は絶対に取り入れるべき習慣と言えるでしょう。

禁煙・節酒

禁煙

せっかくの機会ですのでタバコはスパッと辞められることをオススメします。
少しのタバコであっても高血圧に悪影響しかありませんので、減煙という考え方はオススメできません。
禁煙と合わせて運動の実施を取り入れていただくと、ニコチン切れによる喫煙欲求が出てきた時の気分転換になるほか日に日に心肺能力が改善されていくことが実感できますので、工夫しながら禁煙を成功させましょう。

節酒

日本高血圧学会では、高血圧の予防の観点から1日当たりのアルコール摂取量を男性の場合は20〜30ml、女性の場合は10〜20mlに設定していますので、この基準内でお酒を嗜むことが大事です。(20〜30mlはおおよそビール大びん1本分となります。)

また、お酒のつまみには塩辛い味付けのものが多いため、つまみにも注意しましょう。

週に2日程度は休肝日を設けて肝臓を休ませてあげることも必要です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

高血圧は様々な合併症を引き起こす病気であり、その原因には生活習慣が大きく関係しています。
日頃の生活習慣を見直すことで高血圧は改善することができる病気ですので、数値的な目標を設定し日々努力していきましょう。

また高血圧にはやはり体質も関係していますので、気になる方は遺伝子検査サービスを受けて、高血圧の体質的な傾向を確認されてみるのも良いかもしれません。
遺伝子検査の目的は『体質的な傾向を知ることで日頃の生活習慣の改善につなげて将来の病気の発症を防ぐこと』にありますので、仮に高血圧の体質的な傾向を持っていた場合であっても、結果を悲観的に受け止めるのではなく生活習慣を見直すキッカケとして前向きに捉えることが大切です。

ゲノラボでは遺伝の基本的な知識のほか、遺伝がカラダやココロに与える影響、遺伝と病気との関係性などについて様々な情報を提供していますので、お時間がよろしければ他の記事もご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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