母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査とは

母体血清マーカー検査とは、母体の血液中に含まれる以下の4つのホルモン・タンパク質の濃度を測定することにより胎児がダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)といった染色体異常や、開放性神経管奇形と呼ばれる神経管異常を発症している確率を算出する検査です。
母体血清マーカー検査の対象となるホルモン・タンパク質は以下のとおりです。
⑴αフェトプロテイン(AFP):胎児の肝細胞等で生成される糖タンパク
⑵ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG):胎盤で生成されるホルモン
⑶エストリオール(uE3):母体の肝臓、胎盤、胎児の副腎を経て生成される女性ホルモン
⑷インヒビンA:母体の卵巣で生成される糖タンパク質ホルモン
上記の⑴〜⑷のホルモン・タンパク質の濃度と各種の疾患には以下のような相関関係にあります。
①ダウン症候群(21トリソミー)
胎児がダウン症候群を発症している場合は、αフェトプロテインが減少し、ヒト絨毛ゴナドトロピンが増加、エストリオールが減少、インヒビンAが増加する傾向にあります。
②エドワーズ症候群(18トリソミー)
胎児がエドワーズ症候群を発症している場合は、αフェトプロテイン、ヒト絨毛ゴナドトロピン、エストリオールがそれぞれ減少する傾向にあります。
③開放性神経管奇形
胎児が開放性神経管奇形を発症している場合は、αフェトプロテインが増加する傾向にあります。
上記のホルモン・タンパク質の濃度に加え、妊婦の年齢、体重、妊娠週数、日本人の平均的な基準値、家族歴などといった因子を加味して胎児が対象疾患を発症している確率を算出していきます。

確率を算出する検査ですので、検査結果は「1/500」といった数値で報告されます。仮に1/500であった場合は、まったく同じ結果を得た妊婦が500人いたとして、その内の1人が対象疾患を発症している胎児を妊娠している可能性があるものと解釈いたします。
また、検査結果は数値と合わせて陽性・陰性といった言葉も用いられます。
陽性・陰性の判定にはカットオフ値(ボーダーラインとなる値)が使用され、日本産婦人科学会が公表している論文によると一般に1/295をカットオフ値として使用されているケースが多いようです。この場合、例えば検査の結果対象疾患に発症している胎児を妊娠している確率が1/200と評価された場合は陽性判定となり、1/300と評価された場合は陰性判定となります。

母体血清マーカー検査には2種類の検査方法が存在し、上記の⑴〜⑶の3つのホルモン・タンパク質を調べる検査をトリプルマーカーテスト、⑴〜⑷の4つのホルモン・タンパク質を調べる検査をクアトロテストと呼びます。

トリプルマーカーテスト

トリプルマーカーテストでは、採取した妊婦の血液からαフェトプロテイン、ヒト絨毛ゴナドトロピン、エストリオールの濃度を調べます。
トリプルマーカーテストではインヒビンAの濃度を調べないため、ダウン症候群(21トリソミー)の確率の正確性がクアトロテストに比べて低くなります。

クアトロテスト

クアトロテストでは、採取した妊婦の血液からαフェトプロテイン、ヒト絨毛ゴナドトロピン、エストリオール、インヒビンAの濃度を調べます。
クアトロテストではインヒビンAの濃度を調べるため、ダウン症候群(21トリソミー)の確率の正確性がトリプルマーカーテストに比べて高くなります。

母体血清マーカー検査の時期と費用

母体血清マーカー検査が可能な時期は妊娠15週〜21週6日までの間になりますが、母体血清マーカー検査は確定検査ではございませんので、母体血清マーカー検査後に確定検査としての羊水検査などを受ける可能性があることや、最悪のケースを想定した母体保護法で定められた人工中絶可能期間(妊娠22週まで)などを鑑みると、妊娠15〜16週頃に実施することが望ましいとされています。

母体血清マーカー試験の費用はおおむね1〜2万円と他の出生前検査に比べると安価で、費用面からは受診しやすい検査といえるでしょう。

母体血清マーカー検査の精度

母体血清マーカー検査の精度はそれほど高いものではないというのが現状です。
胎児のダウン症候群の確率をより正確に検出できるクアトロテストのサービスを提供しているラブコープ・ジャパン(株)が1999年から2004年までに実施した19,112例のクアトロテストの結果を元にした調査によりますと、ダウン症候群(21トリソミー)について陽性判定を受けた妊婦が全体の9%(1,763例)で、陽性判定を受けた妊婦のうち実際にダウン症候群の胎児を妊娠されていた妊婦が2%(39例)であったことが報告されています。

また、対象疾患の検出率(※)については以下のとおりとなっています。
・ダウン症候群:87%
・エドワーズ症候群:77%
・開放性神経管奇形:83%
※ 対象疾患を発症した胎児を妊娠していた妊婦のうち、陽性判定を受けた妊婦のパーセンテージを指します。つまりダウン症候群では13%の方、エドワーズ症候群では23%の方、開放性神経管奇形では17%の方がクアトロテストで陰性判定を受けていたが、実際には胎児は対象の疾患を発症していたという結果になります。

トリプルマーカー検査ではダウン症候群と相関関係にあるインヒビンAの濃度を調査しませんので、ダウン症候群の検出率はもう少し低くなると考えておいた方が良いでしょう。

なお、母体血清マーカー検査では妊婦の年齢もひとつの重要因子として確率を算出する関係上、特にダウン症候群については妊婦の年齢が高くなればなるほど陽性判定を受ける確率が圧倒的に高くなります。(※)
費用が高くまた検査の対象疾患が少し異なりますが、出産予定日が35歳以上の妊婦の方は母体血清マーカー検査より精度の高い新型出生前診断(母体血清マーカー検査と同様妊婦の血液から染色体の数的異常を判定する検査です。)を受診されることが可能ですので、こちらの診断の利用を検討する価値はあるでしょう。
※ 35〜39歳の妊婦の場合で17.9%、40歳以上の妊婦の場合で39.4%

母体血清マーカー検査のリスク

母体血清マーカー検査は妊婦の血液を採取するだけで実施することができますので、ほぼリスクは存在せず、リスク面からは手軽に受けられる検査といえます。

母体血清マーカー検査の受け止め方

上述したとおり、母体血清マーカー検査(トリプルマーカーテスト、クアトロテスト)はダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、開放性神経管奇形の確率を求める検査ですので、母体血清マーカー検査の結果判定が陽性あるいは陰性のどちらであったとしても、報告された数値(確率)で異常が存在するという結果に過ぎません。

したがって、確率が高かったからといって異常の存在が確定するものではありませんので、冷静に結果を受け止めることが重要になります。
どうしても確定的な結果が欲しいということであれば、羊水検査(確定検査)を受けることをオススメしますが、羊水検査は0.3%の確率ではありますが流産のリスクがありますので、報告された数値(確率)と羊水検査の流産リスク(0.3%)を比較しながら、慎重に検討する必要があるといえます。

母体血清マーカー検査を受診される場合は、白黒を決める検査ではなく、確率という数値的目安を検査するものであることを理解したうえで利用しましょう。

母体血清マーカー検査の実施条件

母体血清マーカー検査については、受診にあたっての条件がなく希望する方であれば誰でも利用できます。
したがって、母体血を用いた新型出生前診断を条件的に受診することができず、また羊水検査など流産リスクのある検査を避けたい方が利用することができる検査です。

確定審査ではなく、確率的なものしか知ることができないなど、生命倫理的な理由上医師から積極的に妊婦に勧めることはできませんが、希望をされる妊婦であれば利用することが可能です。

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