着床前診断

着床前診断とは

着床前診断という手法は、妊娠の人工中絶には反対してるものの、子供に特定の遺伝性疾患や染色体の数的異常を生じる重大なリスクを持つカップルに代替手段を与えることを目的に、母親の子宮に着床させる前にこれらの遺伝子疾患を明らかにするため開発された技術です。

着床前診断は厳密に説明すると両親のいずれかが重い遺伝子疾患を持っている場合に、当該遺伝子疾患の影響による受精卵の遺伝子異常の有無を調べることが目的の狭義の着床前診断(PGD)と、染色体の数的異常などの影響による流産を防ぐため、当該染色体異常の有無を調べることが目的の着床前スクリーニング(PGS)に分けられますが、目的が異なるだけでどちらも技術的には同等のものです。

具体的には、体外で受精し6細胞から8細胞くらいまで分裂した初期胚から細胞をひとつだけ取り出すことで診断を行います。
着床前診断の結果、問題となる遺伝子疾患や染色体異常がないことが判明した胚は子宮内に移植されて着床しますが、万が一遺伝的な異常が判明した胚は着床されることのないまま廃棄されます。受精卵が着床する前とはいえ、この行為が人工中絶と類似した行為とお考えになる方々もいらっしゃり、倫理的な懸念が指摘されています。

しかしながら、日本産婦人科学会が公表している論文によれば、35〜39歳の流産率が約20%、40歳以上では40%以上が流産という結果になってしまうことが分かっており、残念ながら流産という結果になってしまった原因を調査したところ約60%に染色体異常を起こしていたことが明らかにされています。
つまり、加齢によって流産率が上がってしまい、また加齢により染色体異常の発症率が増加してしまうことが統計的に明らかになっており、このことから着床前診断で染色体異常を調査することで流産の可能性を減少させることにつながるため、妊婦の精神的・身体的負担を減少させると評価することができるのも事実です。

また、流産は母体の妊娠に関する能力にも負担を与えることも知られており、3度の流産を繰り返している習慣流産に陥っている方の4度目の妊娠の流産率は約40%ともいわれています。
着床前診断を実施することで単純に流産率を減少させるという直接的な効果だけではなく、将来的な妊娠・出産のチャンスを増やすことができるという間接的な効果も期待されます。

着床前診断に対する「生命の選別」という厳しい意見もありますが、上記を鑑みると着床前診断は一概に「生命の選別」とはいえず、流産による妊婦の身体的負担(上述した習慣流産による流産率の上昇など)を考えると将来的な「生命の尊重」にもつながる側面を持っていることもまた事実なのです。

着床前診断の時期と費用

着床前診断には体外受精による受精卵を用いますので、時期は着床(妊娠)前となります。

着床前診断にかかる費用としては「日本産婦人科学会の認可を受けた病院で受診される場合」と「婦人科学会の認可を受けていない病院で受診される場合」で大きく異なるようで、前者の場合で約15万円、後者の場合では数十〜100万円ほどの費用がかかるようです。(大谷クリニックさんはウェブサイトで着床前診断の費用を公表されており、1回の採卵で拡張胚盤胞を5個採取した場合は30万円となりますね。)

また着床前診断の受診は体外受精が前提となりますので、体外受精にかかる費用も必要です。
体外受精にはおおむね60〜80万円程度の費用がかかるようです。

費用にバラツキがある他、非常に高額となりますので、着床前診断(体外受精)をご検討の方は、具体的な費用について下記の着床前診断を実施している病院に記載の病院に直接お問い合わせされた方が良いでしょう。

着床前診断のリスク

着床前診断の実施は体外受精が前提となります。
体外受精を行う際には排卵誘発のために卵巣を刺激したり、採卵をいたします。
これらの行為には多少のリスクが伴いますので、以下で説明させていただきます。

卵巣刺激のリスク

排卵誘発のために卵巣を刺激した後、卵胞(卵子が入っている袋)が沢山出来すぎて卵巣が大きく膨れ上がってしまい腹水や胸水などの症状を引き起こすリスクがあります、このような症状が起きた場合、脱水を起こし血栓症を併発するリスクがありますので、入院等が必要になるケースもあります。
これらの卵巣刺激に伴う症状のことを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼びます。

採卵のリスク

採卵の際には膣から針を刺すことで卵巣内にある卵胞から卵子を採取いたしますので、この注射に伴う感染や卵巣の周辺に存在する臓器(子宮・膀胱・腸・血管)を損傷してしまうリスクが存在します。
感染については抗生剤の点滴を行いながら採卵することで予防が図られており、また臓器損傷についても経膣エコーを見ながらの採卵となり臓器を避けて採卵していきますので問題になることは少ないというのが現状です。
しかしリスクとしてはゼロではありませんので、これらの採卵リスクをきちんと把握しておくことが必要です。

着床前診断の受け止め方

着床前診断の最大の目的は、両親のいずれかが重い遺伝性疾患を持っている場合に生まれてくる子が特定の遺伝性疾患になることを防ぐこと、および染色体異常を原因とする流産を防ぐことになります。(上述したとおり、前者が狭義の着床前診断(PGD)で、後者が着床前スクリーニング(PGS)と呼ばれています。)

稀に着床前診断を受けることでパーフェクトな子が生まれると勘違いされている方がいらっしゃいますが、着床前診断の目的はパーフェクトな子を選別することにはありません。(このような選別は生命倫理の観点からあってはならないことです。)

また、医療の発展により染色体(遺伝子)が正常型であることを高い精度で判定することはできますが、誤診の可能性はゼロではありません。

なお、染色体異常が流産の原因の多くを占めますが、染色体異常以外が原因の流産もありますので、着床前スクリーニング(PGS)によって流産の可能性がゼロになることを保証できるものではありません。

これらの着床前診断の性質をよく踏まえた上で、専門医のカウンセリングを受けられるとよいでしょう。

着床前診断の受診条件

着床前診断を受診される方法としては以下の2つの方法が存在しており、それぞれで受診条件が異なります。

⑴日本産婦人科学会の認可を受けた病院で受診される場合
日本産婦人科学会の認可を受けている病院は同学会が公表している「着床前診断」に関する見解に従って着床前診断を実施します。同見解には実施条件が厳格に定められていて原則として「重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子ならびに染色体異常を保因する場合」と「重篤な遺伝性疾患に加え、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)」を対象としています。
つまり、両親のいずれかがなんらかの遺伝子、染色体異常(均衡型染色体構造異常)を持っている場合に限られますので、例えば高齢出産などを原因とする染色体異常には対応していません。

一方で、日本産婦人科学会は2015年12月12日付で、高齢出産などを原因とする染色体異常に対応する着床前スクリーニングを臨床研究に向けた予備試験という位置付けで2017年末までに100人を対象として実施することを決定しています。
こちらの予備試験は35〜42歳の女性で、以下の条件に適合する合わせて100名の方を対象としています。
・体外受精をしたものの3回以上出産に至っていない方を50名
・原因不明の流産を2回以上繰り返している方を50名
これらの予備試験の結果をもとに、着床前スクリーニングが流産率の減少・妊娠率の改善につながるかどうかを検証するようです。

⑵婦人科学会の認可を受けていない病院で受診される場合
着床前診断に関する直接的な法的規制は現在の日本においては存在せず、そのため日本産婦人科学会の認可を受けていない病院では同学会が公表している「着床前診断」に関する見解の制約を受けることなく着床前診断を実施しておられます。
したがって、着床前診断にかかる具体的な受診条件は各病院により異なります。

着床前診断を実施している病院

※ 下記ではウェブサイト上で確認できた病院のみを掲載しており、また内容の正確性を保証するものではございませんので、詳細は各病院にお問い合わせ下さいますようあらかじめご了承ください。

⑴日本産婦人科学会の認可を受けて着床前診断を実施している病院

東京都

施設名称 概要
慶応義塾大学病院
担当部門:産科(HP
住所:〒160-8582 東京都新宿区信濃町35(地図
電話番号:03-3353-1211(代表)
加藤レディスクリニック
担当部門:臨床遺伝診断部(HP
住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-20-3 ウエストゲート新宿ビル(地図
電話番号:03-3366-3782(直通)

愛知県

施設名称 概要
名古屋市立大学病院
担当部門:産科婦人科(HP
住所:〒467-8602 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番地(地図
電話番号:052-851-5511(代表)

大阪府

施設名称 概要
IVFなんばクリニック
担当部門:ー(HP
住所:〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江1-17-28(地図
電話番号:06-6534-8824(代表)
IVF大阪クリニック
担当部門:ー(HP
住所:〒577-0012 大阪府東大阪市長田東1丁目1-14(地図
電話番号:06-4308-8824(代表)

兵庫県

施設名称 概要
英ウィメンズクリニック
担当部門:ー(HP
住所:〒650-0021 兵庫県神戸市中央区三宮町1丁目1-2 三宮セントラルビル2・7・8階(さんのみやクリニック)(地図
〒655-0893 兵庫県神戸市垂水区日向1丁目4-1 レバンテ垂水1番館2階(たるみクリニック)(地図
電話番号:078-392-8723(さんのみやクリニック)
     078-704-5077(たるみクリニック)

福岡県

施設名称 概要
セントマザー産婦人科医院
担当部門:ー(HP
住所:〒807-0825 福岡県北九州市八幡西区折尾4丁目9番12号(地図
電話番号:093-601-2000(代表)

⑵日本産婦人科学会の認可外で着床前診断を実施している病院

長野県

施設名称 概要
諏訪マタニティークリニック
担当部門:特殊生殖医療部門(HP
受診条件:
⑴染色体異常が原因で流産を繰り返す場合
⑵夫婦の一方か双方に染色体異常、性染色体に伴う遺伝性疾患の因子があり、生まれてくる子どもに遺伝する可能性が強い場合(保因者を除外はできません)
⑶染色体異常児の出産が強く懸念される、またはその再発が懸念される場合
⑷常染色体上の遺伝子異常の診断はできません
⑸性別を選ぶための男女産み分けは一切おこないません。
※ その他の詳細は病院にお問い合わせください。
費用:記載なし
住所:〒393-0077 長野県諏訪郡下諏訪町矢木112-13(地図
電話番号:0266-28-6100(代表)

兵庫県

施設名称 概要
大谷レディスクリニック
担当部門:ー(HP
受診条件:ー ※ 病院にお問い合わせください
費用:1回の採卵で検査する拡張胚盤胞5個までは1個にき6万円/6個目からは1個にき3万円
住所:〒651-0096 兵庫県神戸市中央区雲井通7丁目1-1 ミント神戸15F(地図
電話番号:078-261-3500(代表)
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