出生前診断

出生前診断とは

出生前の胎児の染色体などを検査することにより染色体異常や遺伝性疾患の有無について検査を受けることができます。

親族や祖先に遺伝病が多く見受けられる場合や、比較的血縁関係の近い者同士の間で子を出産する場合など生まれる前に遺伝子異常の有無を検査しておくことが望ましいケースが存在します。
また高齢出産の場合など生まれる前に染色体異常の有無を検査しておくことが望ましいケースも存在するでしょう。

このような場合昔は天に身を任せて出産するしかありませんでしたが、遺伝医学の発展により出生前診断で遺伝子や染色体の異常の有無を検査することができるようになりました。

出生前診断は生命の選択にもつながる可能性があるものですので、生命倫理的な配慮は勿論のこと、高度な遺伝カウンセリングが必要となります。

出生前診断の時期

出生前診断の時期は、一番早いもので着床前(妊娠前)からおおむね妊娠約18週までの間に行われます。

それぞれの出生前診断の種類によって検査時期は異なりますが、それぞれの出生前診断の詳細ページにて時期も含めた内容をご紹介させていただきます。

出生前診断の時期がおおよそ妊娠後18週までとなっているのにはわけがあり、法的に妊娠中絶を認められている期間が妊娠後21週6日までだからです。

妊娠後22週を過ぎた胎児は母体の外に出ても生存することが可能であると判断されるため、母体内でしか生存することができない生命から、母体と切り離されても独立して生存可能な生命に切り換わるとみなされるため、妊娠22週を経過後の中絶は原則として認められません。

妊娠中絶が認められる期間(=胎児が母体外で独立して生存可能とされる期間)は医療の発達とともに短縮化されてきており、1953年の時点では妊娠後8ヶ月未満、1976年の時点では妊娠後24週未満、1990年に現行の妊娠後22週未満となりました。

出生前診断でわかること

出生前診断により染色体異常の有無を検査することが可能です。

具体的には、正常であれば2本1組の21番染色体が3本になる21トリソミー(ダウン症)、18番染色体が3本になる18トリソミー、13番染色体が3本になる13トリソミーなどの染色体異常が検査により分かります。

その他、父親・母親の家系に遺伝性の疾患が見受けられる場合は、該当の疾患について遺伝の有無を検査することもできます。

出生前診断の受け止め方

出生前診断の結果、残念ながら染色体異常が発見されるケースも当然あります。

特に現代においては出産の高齢化が進んでおり、この傾向によりダウン症の赤ちゃんの出生率も上がっていると言われています。(統計的には出産年齢が高くなるほどダウン症の赤ちゃんの出産確率も高くなるというのが事実です。)

【母体年齢と子どもの染色体異常リスク】

母体年齢 ダウン症発症率 その他の染色体異常発症率
20歳 1/1,667 1/526
25歳 1/1,250 1/476
30歳 1/952 1/384
31歳 1/909 1/384
32歳 1/769 1/323
33歳 1/625 1/286
34歳 1/500 1/238
35歳 1/385 1/192
36歳 1/294 1/156
37歳 1/227 1/127
38歳 1/175 1/102
39歳 1/137 1/83
40歳 1/106 1/66
41歳 1/82 1/53
42歳 1/64 1/42
43歳 1/50 1/33
44歳 1/38 1/26
45歳 1/30 1/21
46歳 1/23 1/16
47歳 1/18 1/13
48歳 1/14 1/10
49歳 1/11 1/8

万が一、お腹の中にいる赤ちゃんが染色体異常を持っていた場合、父・母としてどのように判断をすれば良いのかについても、出生前診断を受診されるにあたって事前に夫婦でよく話し合い、誤った判断をしないよう病院の遺伝カウンセリングをきちんと受けておくべきでしょう。

人工中絶と法律

一方で、日本においては染色体異常を理由とする人工中絶について、法律で明文的に認められているわけではありません。
日本における人工中絶を規定する法律は母体保護法であり、母体保護法の解釈の詳細については厚生労働省などから通達が出ているわけですが、法および通達において人工中絶について以下のとおり規定されております。

法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

(母体保護法第2条第2項)
優生保護法(母体保護法)第2条第2項の「胎児が、母体外において生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。この時期の判断は、個々の事例について優生保護法第14条に基づいて指定された医師によって行われるものであること。
(厚生労働省通達)
都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
(母体保護法第14条第1項)

つまり、法律上は《身体的・経済的理由で妊娠の継続・分娩が母体の健康を著しく害する恐れがある》もしくは《暴行や脅迫により拒絶することができず妊娠してしまった》ケースであって、かつ妊娠後22週未満に人工中絶を行う場合に限り人工中絶を認めているわけです。

これらの条文の中には《胎児の染色体異常が見つかった場合》という言葉はまったく記載されておりません。
ただし子供を産むことが経済的に困難であるケースについて人工中絶が認められていることから、現行の法の下においては、染色体異常の子供を産み育てていくことが経済的に困難であるということを理由に人工中絶を実施している場合が多いようです。
従って、染色体異常を理由とする人工中絶は法律で認められている人工中絶というわけではなく、法律を拡大解釈的に理解して運用されているものといえるでしょう。

人工中絶の実施の可否を判断する時間的余裕はない

上述したとおり、妊娠後22週を超えての人工中絶は原則として認められていないため、万が一出生前診断で染色体異常が見つかってしまったケースにおいて、人工中絶の可否を判断する時間的余裕がないということがいえます。

特に妊娠後18週で羊水検査を受け染色体異常が発覚したケースなどにおいては、検査の結果を受けて数週間で赤ちゃんの運命を決めなければならないという非常にシビアな状況になってしまいます。

ですので出生前診断はできる限り早い段階で受診し、また最悪のケースに備えて心の準備をしておく必要もあるでしょう。

医療の発達とともに遺伝カウンセリングについてもどんどん発達してきていますので、かかりつけの病院に相談するなど密にコミュニケーションを取ることも大切と言えるでしょう。

人工中絶の考え方はヒトそれぞれである

染色体異常が発見された場合に人工中絶を実施するかどうかはヒトそれぞれ考え方が違うと感じています。

染色体異常を理由とする人工中絶に対し「生命の選択だ」と叱責される方のご意見も正しいと思いますし、逆に染色体異常を理由として「産まれてくる子を幸せにすることが難しい」として人工中絶を実施される方の決断も決して間違っていないと思います。

どちらが正しくてどちらが間違っているということではなくて、一番大切なことはあなたやあなたの配偶者が幸せで、なにより産まれてくる赤ちゃんが幸せでいられるか、ということではないでしょうか。

せっかく授かった大事な生命ですので、出生前診断を受診される前に是非ご夫婦でよく話し合ってみてください。

出生前診断の種類

出生前診断を実施時期の順番でご紹介させていただきます。なお、通常の妊娠中の検査で実施される「胎児超音波検査(エコー検査)」と「胎児心音測定」についてはご紹介を割愛させていただきますのでご了承ください。

着床前診断

体外受精を実施した場合において、着床前の細胞数の少ない胚から細胞を少し採取して遺伝子を検査することができます。
羊水検査・絨毛検査・新型出生前診断が比較的妊娠が進んだ後しかできないことに対して、受精後すぐに遺伝子を検査することができます。

>>着床前診断

新型出生前診断(NIPT)

母親の血の中に混じった胎児由来のDNAを量的に調べることで、一部の染色体異常の有無を検査することができます。

>>新型出生前診断

絨毛検査

胎盤の絨毛を採取して、絨毛に含まれる胎児の細胞から遺伝子を検査することができます。

>>絨毛検査

母体血清マーカー検査

母体血中に含まれる特定のホルモンやタンパク質の濃度を測ることで一部の染色体異常の有無、および神経管異常の有無を検査することができます。

>>母体血清マーカー検査

羊水検査

羊水を採取して、羊水に含まれる胎児の細胞から遺伝子を検査することができます。

>>羊水検査

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