遺伝子とは

遺伝子はタンパク質を作る生命の設計図

私たちのカラダの組織を構成し、形成しているのはタンパク質です。

つまり、カラダの芯となる骨、カラダを動かすための筋肉、生命活動を維持するための臓器、物事を考える脳もすべてタンパク質から作られているのです。

言い換えれば、タンパク質がなければヒトを形成することもできず、ヒトとして存在できないこととなります。

ゲノムとはでご説明させていただいたとおり、私たちヒトのカラダは約37.2兆個の細胞で構成されており、これらの細胞1つ1つが細胞の存在する部位で必要とされるタンパク質を形成します。

例えば、目に存在する細胞では目を形作るためのタンパク質が合成されますし、皮膚に存在する細胞では皮膚を形作るためのタンパク質が合成されるわけです。

体中のすべての細胞の中に存在するゲノムがまったく同じ塩基配列を持つことはゲノムとはで説明したとおりですが、同じゲノムを持つ細胞であるにも関わらず、これらの細胞が存在する部位に応じて様々な形に変幻自在に形を変えていく様は言葉で言い表せないくらい不思議な現象だと言えるでしょう。

このように、存在する部位にふさわしい形に細胞を自在に変形させるタンパク質を合成するための司令塔のような役割を果たす塩基配列を遺伝子と呼び、ゲノムを構成する全塩基配列中の一部が遺伝子領域となります。

遺伝子はタンパク質の元となるアミノ酸のレシピ

タンパク質は複数のアミノ酸から構成された化学物質となりますので、タンパク質を合成するためには複数のアミノ酸を結合させる必要があります。

タンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類存在し、この20種類のアミノ酸が色んな並び方で結合することによって、様々な特徴を持ったタンパク質が合成されます。

つまり上述した目や皮膚を例にとると、目には目のタンパク質の元となるアミノ酸配列がありますし、皮膚には皮膚のタンパク質の元となるアミノ酸配列があるわけです。

全塩基配列の一部が遺伝子領域となりますので、20種類のアミノ酸はアデニン(A)チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の塩基によって決定されていることになります。

塩基は全部で4種類しか存在しませんので、当然塩基1文字だけでは4つのパターンしかカバーできないため20種類のアミノ酸を指定することは不可能で、2文字の塩基の組み合わせであっても4×4=16で20種類のアミノ酸をカバーすることはできません。

塩基3文字の組み合わせになるとはじめて、4×4×4=64種類の塩基の組み合わせパターンが発生するため、論理上20種類のアミノ酸をすべて指定することが可能となります。

実際に遺伝子上においては上記の3文字の塩基の組み合わせで1つのアミノ酸を指定する仕組みになっており、このアミノ酸を指定する3文字の塩基の組み合わせを遺伝暗号と呼びます。

20種類のアミノ酸に対して64パターンの遺伝暗号が存在しますので、遺伝子上では複数の遺伝暗号が1種類のアミノ酸に対応しているほか、遺伝子領域の開始地点(アミノ酸合成の開始地点)を示す遺伝暗号=開始コドンや、遺伝子領域の終了地点(アミノ酸合成の終了地点)を示す遺伝暗号=終止コドンが存在します。

以下の表が20種類のアミノ酸、開始コドンおよび終了コドンの遺伝暗号表となります。
遺伝暗号表のイラスト
ヒトのゲノムを構成する約30億の塩基配列の2%にあたる約6000万の塩基配列が、上記の遺伝暗号の組み合わせで構成された、タンパク質を合成するためのアミノ酸のレシピの役割を果たす遺伝子領域となります。

遺伝子からタンパク質が作られるまで

上述のとおり、タンパク質は複数のアミノ酸の結合によって合成されているため、ヌクレオチドから構成される遺伝子(DNA)からタンパク質を合成することはできません。つまり、遺伝子領域で読み取られた塩基配列の情報を元に、別の場所にあるアミノ酸を細胞内に運んできて、運ばれた複数のアミノ酸を結合してタンパク質を合成する必要があるわけです。

上記のタンパク質の合成にあたっては、細胞内に存在するRNA(リボ核酸)とリボソームと呼ばれる組織が、遺伝子情報の読み取りや、アミノ酸を結合させる役割を果たすのですが、以下に遺伝子の情報(塩基配列)を元にタンパク質が合成されるまでの流れを説明させていただきます。

⑴遺伝子領域の情報(塩基配列)を読み取る
まず、遺伝子領域の情報(塩基配列)を読み取る必要があります。

遺伝子領域の情報(塩基配列)の読み取りにあたってはmRNA(messanger RNA)がその役割を果たします。

以下の塩基配列を持つDNAを例に考えてみましょう。

DNAとはで説明させていただいたとおり、DNAの一方はゲノムそのものを示す塩基配列であるセンス鎖と、もう一方はゲノムそのものを示す塩基配列と相補性を持つ塩基配列であるアンチセンス鎖となります。

今回の例では便宜上、5’→3’の塩基配列をセンス鎖、3’→5’の塩基配列をアンチセンス鎖とさせていただきます。

DNAとはで説明させていただいた細胞分裂の際にDNAが複製される流れと同様に、5’→3’のセンス鎖をコピーするために3’→5’のアンチセンス鎖を鋳型として使用します。

3’→5’のアンチセンス鎖と相補性を持つ塩基が結合していくことで5’→3’のセンス鎖の塩基配列を読み取ることが可能になるわけですが、この役割を果たすのがmRNAです。

以下のようにmRNAは5’→3’の方向で作られていきます。

このとき、アンチセンス鎖の塩基Aに対しU、Tに対しA、Gに対しC、Cに対しGの塩基を持つヌクレオチドが順番に取り込まれていき、RNAが構築されていきます。

すでにお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、mRNAではDNAの塩基であるチミン(T)の代わりにウラシル(U)という塩基が使用されます。

アンチセンス鎖と相補性を持つ塩基配列で構成されたmRNAは、チミン(T)がウラシルに変わっている部分を除き、センス鎖の塩基配列と同じ塩基配列を持つことになり、センス鎖に存在する遺伝子情報を含んだ塩基配列の読み取りが完了します。

⑵読み取った遺伝子情報の遺伝暗号がリボソームで解析される
細胞の核内のDNAから遺伝子情報を読み取ったmRNAは細胞の核外へ飛び出します。

細胞の核外ではリボソームという組織が存在しており、まずはこのリボソームが遺伝暗号の解析をいたします。
mRNAが細胞の核外に飛び出してリボソームのあるところに動いた様子を示すイラスト
上記ではセンス鎖を構成する塩基による遺伝暗号表を紹介いたしましたが、リボソームでの解析に使われるのは核外に飛び出したmRNAの塩基配列ですので、厳密には遺伝暗号表のチミン(T)がウラシル(U)に代わり、以下のような暗号表になります。
実際にリボソームが解読する遺伝暗号表のイラスト
リボソームはmRNA上を5’→3’の方向へ動き遺伝暗号の解析を進めていきます。
mRNAの塩基配列上をリボソームが解析していく方向を示したイラスト
⑶解析した遺伝暗号を元にタンパク質が合成される
リボソームで解析された遺伝暗号を元にアミノ酸が結合されていきタンパク質が合成されていくわけですが、このときアミノ酸をリボソームへ運ぶ役割を果たすのがtRNA(transfer RNA)です。

tRNAは上記の遺伝暗号に対応する塩基を持っており、また遺伝暗号に対応するアミノ酸をリボソームまで運びます。
例えば、遺伝暗号解析の開始コドンであるAUGに対しては、UACの塩基を持ったtRNAが結合し、このtRNAにはメチオニンが付いています。

リボソームにはtRNAの入り口と出口が存在しており、遺伝暗号に対応する様々なtRNAがmRNAの塩基配列と一時的に結合することによってリボソームへ遺伝暗号に対応するアミノ酸を運んでいき、アミノ酸を運び終えたtRNAが出口から出ていくことで、リボソーム内には遺伝暗号に対応するアミノ酸が蓄積されていきタンパク質が合成されます。

以下に図解で上記の流れを説明いたします。

①リボソームはmRNA上を5’→3’の方向へ移動していき、開始コドンAUGを見つけると遺伝暗号の解析を開始します。
リボソームが遺伝解析開始位置を解析した様子を示すイラスト
②開始コドンAUGに対応する塩基UACを保有したtRNAがリボソーム内に移動してきて結合します。このとき塩基UACを保有したtRNAはメチオニンというアミノ酸を運んできます。
tRNAによって開始コドンに対応するメチオニンがリボソームに運ばれてくる様子を示すイラスト
③メチオニンをリボソームに運び終えたtRNAは結合を解除して、メチオニンをリボソーム内へ残して外へ出ていきます。
メチオニンを運び終えたtRNAがリボソームの外へ出ていく様子を示すイラスト
④続いてリボソームは遺伝暗号であるACGを解析し、これに対しても同様にUGCの塩基を保有したtRNAがリボソーム内に取り込まれて結合し、遺伝暗号に対応するアミノ酸のスレオニンを運んできます。スレオニンを運び終えたtRNAは結合を解除しスレオニンを残して外へ出ていきます。
リボソームが遺伝暗号を解析し、遺伝暗号に対応するスレオニンがリボソーム内に運ばれた様子を示すイラスト
⑤リボソームが次の遺伝暗号であるGAUを解析、CUAの塩基を保有したtRNAが遺伝暗号に対応するアミノ酸のアスパラギン酸を運んできます。アスパラギン酸を運び終えたtRNAは結合を解除しアスパラギン酸を残して外へ出ていきます。
リボソームが遺伝暗号を解析し、遺伝暗号に対応するアスパラギン酸がリボソーム内に運ばれた様子を示すイラスト
⑥リボソームが次の遺伝暗号であるAGCを解析、UCGの塩基を保有したtRNAが遺伝暗号に対応するアミノ酸のセリンを運んできます。セリンを運び終えたtRNAは結合を解除しセリンを残して外へ出ていきます。
リボソームが遺伝暗号を解析し、遺伝暗号に対応するセリンがリボソーム内に運ばれた様子を示すイラスト
⑦リボソームが次の遺伝暗号であるUAGを解析、UAGは終始コドンになりますのでリボソームはここでmRNAの解析を終了します。この結果メチオニン+スレオニン+アスパラギン酸+セリンという4つのアミノ酸が結合したタンパク質がリボソームで合成されます。
リボソームが終始コドンで解析を終了、リボソーム内に蓄積されたアミノ酸がタンパク質に合成される様子を示したイラスト
mRNA・リボソーム・tRNAの働きにより、以上の流れで遺伝子からタンパク質が合成されます。

対立遺伝子とは

染色体とはで説明させていただいたとおり、ヒトは44本の常染色体と2本の性染色体を持っています。

常染色体の中には2本の相同染色体(父親譲りの染色体と母親譲りの染色体)が22セット存在しているわけですが、この染色体を紐解いた1対のDNAの同じ位置には同じ種類の遺伝子が存在しています。

つまり、常染色体上に存在する遺伝子については、ヒトは2つの同種類の遺伝子を持っているといえるわけですが、この2つの遺伝子のことを対立遺伝子と呼びます。

遺伝子型とは

ヒトが相同染色体において対立遺伝子を持っていることは上述したとおりですが、この2つの対立遺伝子の型のことを遺伝子型と呼びます。

例えば血液型をA型にする遺伝子と、血液型をO型にする遺伝子をそれぞれ持っているヒトの遺伝子型はAOとなりますし、B型にする遺伝子とO型にする遺伝子をそれぞれ持っているヒトの遺伝子型はBOとなります。

表現型とは

表現型とは、遺伝子の働きにより表面上に現れる形質のことを指します。

対立遺伝子が必ずそのまま表面上に形質として現れるわけではなく、例えば上述した血液型の例で説明しますと、AOの対立遺伝子を持つヒトはA型という形質が表に現れますし、BOの対立遺伝子を持つヒトはB型という形質が表に現れます。

このA型やB型といった表面に現れる形質のことを遺伝子の表現型と呼びます。

なお、表現型のなかにはAB型のケースのように対立遺伝子がそのまま表に現れるケースも存在します。

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